まずは苦手を克服しないとな。

「何か(つまず)いてるみたいだね?」

「へ?」

「顔に書いてある」

ハッとした私は慌てて頬を触ってみたけど…
そういう問題じゃないよな。

「“モデルの勉強中”なんでしょ?
 俺に話してみなよ。
 この業界じゃ一応先輩だし
 役に立てるかも」

確かに然さんは
ハイスペックプロデューサー。
何か良いアドバイスが貰えるかも…
そう思い

「笑顔が、作れなくて…」

恥ずかしさもあり
躊躇いながら答えてしまう。

「笑顔を作るかぁ…
 じゃぁちょっとこっちに来て」

彼が向かった先は
リビングの隅の観葉植物の横に置いてある全身鏡。

「鏡…?」

レッスンでもするの?

よくわからないけど
ひとまず鏡の前に立つと
彼は鏡の隣に立って言う。

「自分を見ながら口角を上げて笑顔を作るのも、日々の練習では大事だと思う。でも俺は、由凪さんの《《本来》》の笑顔を知ってる」

「本来の笑顔?」

「初めて撮影したとき
 自然と笑っていたでしょ?」

『初めての撮影』
それを聞いて思い出した。