19:00ーーー

「うーん…
 新しい事を始めるのは難しい…」

家に帰り夕飯の準備をしながら
『初心者の為のモデル講座』の本を片手にブツブツ。

美南さんに言われた言葉が頭の片隅から離れないけれど、今は自分に出来る事をしなきゃと思い
この歳になって勉強を始めてはみたものの…
やはり立ちはだかる壁は厚い。



ーーーピンポーン…


引っ越してきて1週間
宅配便以外で珍しくインターホンが鳴ったため
料理を途中に玄関を開けた。

「お疲れ様、由凪さん」

「然さん…?
 お疲れ様です…
 どうしたんですか?」

訪ねてくるなんて初めてだ…って
そもそもこの部屋は彼のモノなんだけど。

「今日の由凪さん疲れてたみたいだから。
 これ差し入れ」

そう言って手に持っていた白いキャリー箱を差し出す彼。

「これって…
 ある有名な、すぐに完売してしまうケーキ屋さんの…?」

「さすが。女性はよく知ってるね。
 もし良かったら食べて」

「ありがとうございます…」

年下君なはずなのに
この優しい気遣いは、キュンとくる。