腕を組みヒールの音をカツカツと響かせて廊下を歩く美南さんの後ろ姿から、威圧的なものを感じる。
連れて来られた非常階段。
殴られるのでしょうか。
「単刀直入に聞くけど
どういうつもりでモデルをしているの?
何が目的なの?」
“嫌悪感”がわかりやすいくらい率直な質問は
まるで警察官の取り調べのよう。
「貴方の事、ちょっと調べさせてもらったわ。
今まで会社で働いていてモデルの経験もなかった人が、急にどうして始めたのよ。
それどころか知識もないみたいじゃない」
「…仰る通りです」
険しい表情であまりの勢いで言うものだから
それしか言いようがなくなってしまう。
「私も含めて、みんな誇りを持ってやっているの。努力を重ねて、たくさんオーディションを受けて、そして大勢の中から選ばれる。
それで初めて認められるの。
落ちてしまった人の分まで精一杯やっているのよ。その気持ちが貴方にわかる?」
捲し立てる迫力に完敗してしまったが
この人の言う事は決して間違いではない。