自問自答に落ち着かない私の事など
微塵も気にする様子のない然さん。
手元の書類を見せながら
『じゃぁ説明を始めるよ』と冷静すぎる。
何この温度差。

きっとこの人は
私と違って慣れているのかもしれない。
『キス如き挨拶の1つ』みたいな考え方なのかも。

私だけ
どんどん沼にハマっていってる気がする。

「そうだ、もう1つ」

「…今度はなんです?」

また何やら思い出したらしく
悪い予感を覚悟する。

「今、彼氏っているの?」

「はい!?」

「だから《《彼氏》》」

強調しなくても聞こえているよ。
知りたいのはそこじゃない。

「どうしてそんなことも聞くんです? 
 あなたには関係ないじゃない」

「仕事には関係あるよ。
 “恋する大人女子”がコンセプトなんだし」

「大人女子《《だけ》》じゃなかったんですか。
 《《恋する》》なんて聞いてませんよ」

「…そうだっけ」

一瞬“間”が空いて答える彼。
『ち、バレたか』とでも言いたそうな表情なのが腹立つ。

仮に”恋する大人女子”のコンセプトとしても
彼氏の有無に関係があるの?