「そうだ由凪さん。
 仕事の話じゃないんだけど
 昨日聞き忘れちゃった事があってさ」

書類に目を通しながら
世間話の1つみたいに私に、しれっと聞く。

「処女じゃないよね?」

「しょッ!?」

大胆で直球すぎる質問に
私は思わずハッキリと大声で叫びそうになって
急いで手で口を覆った。

「な、何を急にそんなこと聞くんですッ!?」

改めて細声で聞き返してみたけれど
顔から火が出そうなほど恥ずかしくて
体温は一気に上がっていく。

「深い意味はないけど
 思ったよりキスが上手いなって思って。
 恋愛経験がわからないから
 一応聞いてみたくてね」

き、キスが上手いってッ
『あ、そうなんですね』なんて軽く聞き流せるような返答じゃなかった。

やっぱり何なの、この人は。
恥ずかしげもなく
顔色1つも変えず、こんな質問

「せ、セクハラですよ!」

「そうかな?
 俺と由凪さんの”仲”なのに?」

「答えになってないからッ」

私達の”仲”って何?
き、キスした(だけの)関係なのに?

って、キス(それ)がダメじゃん。