「あの時のことはもう怒ってないよ。それより、命は一つしかないんだ。だから、大切にしてほしい。決して盾になろうなんて考えないで」

泣きそうな顔をするエリカに僕は言う。心が弱くて、前世では自ら死を選んだ僕の言葉なんて説得力はゼロだと思う。でも、この言葉を言いたくなった。

「はい、大切にします。だから先生も自分の命、大切にしてくださいね」

エリカはニコリと笑って言う。僕が「うん」と胸を高鳴らせながら答えると、「フン。敵の罠にかかっているような状態だというのに、楽しくおしゃべりができるほど余裕なんだな」と冷たい声が降ってきた。

僕たちが一斉に上を見上げると、家の屋根にオズワルドさんが立っている。そして、赤い目は僕たちを睨んでいた。

「お前たちが仲良く話している間に準備をさせてもらったぞ。行け、お前たち!」

オズワルドさんがそう言い、指をパチンと鳴らすと、空中に数多くの物の怪たちが姿を現す。彼はまるで指揮者だ。物の怪という演奏者たちを操り、残酷な旋律を奏でている。