待ち合わせ時刻よりも少し先に、

僕が彼女のマンションに到着して見たものは、

二台の赤い消防車と、

どす黒い煙を上げて燃え盛る炎だった。



近所から集まった野次馬に、必死で行われる消火活動。




目の前で繰り広げられる現実が理解できず、

キャンプファイヤーでも眺めるように、

ほとんど形を失った彼女の住処を前に、

ただ呆然と立ち尽くしていた。










昨晩、彼女は眠れないと言っていた。

僕が止めるのも聞かずに、睡眠薬を飲んでいた。

7年前に死んだという、恋人が彼女を苦しめていた。

炎の中で、彼女はきっと、眠り続けていたに違いない。








行き場を失った僕の元に、一件のメールが届く。










(もう着く?)










炎の中にいるはずの、彼女からだった。