世界No.1暴走族・天海朧月 下

✿七聖side✿

あの日から、1ヶ月。

私はスマホも変えて、心機一転としていた。

古いスマホは、まだ使えるけど………。

もう、個人的に海王に会っちゃダメだ。

向こうは、敵なんだから。

それに……会ったら、恋しくなる。

それじゃあ守る意味もなくなるから……。

これは直感だけど、お兄ちゃんの死の真相は白狐にあると思うんだ。

ちょうど白狐がNo.1になったのも、お兄ちゃんが死んでから。

それに……海王は、人を殺めたりしない。

先代のことは分かんないけど、言い切れる。

あれからずっとずーっと忙しいスケジュールを組んだのはいいけど……。

「一人暮らしだもんなぁ……退屈ー」

家にいると、やっぱ自由な時間ができちゃう。


「はっ……くしゅん!」

久しぶりにくしゃみしたな……。

春は終わったけど、今頃花粉症かな?


「くしゅんっ……うぅ、寒っ……」

さっきお風呂で冷えたのか?

とりあえず、もう寝とこうかな……。



次の日、私は倉庫に来てた。


「じゃあちょっと街に行ってくるよ」

大和
「七聖、海王も今日パトロールで街に出るってよ〜」
……へぇ、海王も。

なら、会わないようにしなきゃ。


「わかった。会ってケンカになんないように気をつけるよ。行ってきます」

「総長、いってらっしゃい!」

「気をつけてくださいっす!」

倉庫を出て、歩いた。

やば……なんか、頭重い……。

いや、気のせいだよね。うん。

街に出ると、たくさんの人がいた。

たまに路地裏とかでケンカがあるから、それを確かめないと。

もししてたら、止めないといけない。

それが私総長の役目。

もう夏なのに、なんでこんな寒いんだ?

まさか……風邪?
最近ベランダにずっといたからかな?

目の前もぐらついて……。

「七聖……?」

え……?

名前を呼ばれて振り向くと、優心と朝陽と翔悟と凪がいた。

っ……。

優心
「な……」

私はぷいっと前を向いて、ふらつく足で必死に走った。

優心
「あ、おい!待て!」

朝陽
「七聖っ、人にぶつかるよ!」

パシッと優心に腕を掴まれた。

そして、優心の方を向かされる。
今……一番、会いたくないのに。

優心
「七聖、顔赤いぞ?熱があんじゃねーの!?」


「っ、関係ないでしょ……」

優心
「関係あるに決まってんだろ!」

どうして……。

どうして、私だってわかったんだろ。

前髪だって作ったのに……。


「大和から聞いたよ?忙しくて暇がないって」

ビクッと肩が揺れた。

翔悟
「電話しても出ないし、どうしたんだ七聖!」

な、んで……。

「私はあんたらを裏切った……なのに、なんでそんなこと言ってくんの……?」

朝陽
「みんな、七聖が好きだからだよ」

それだけで……ここまでするの?


「私は……誰も好きにならないから、諦めて他の子探してよ」

優心
「お前が好きなのは俺だろ……!なんでそんな嘘を言うんだよ!?」

やめて……。


「……私は、海王じゃなくて直接白狐を倒すから。海王と戦うつもりはない」

優心
「はぁっ!?お前、それ危ないだろ!」


「危ないけど、命をかけても守りたいものがあるの!あんたらに邪魔されたくない!」
大声を出したせいで、頭がクラクラしてきた。

やば……立って、られない……。

でも、行かないと。


「じゃあ私、もう、行く……」

優心
「……行かせるかよ」

その瞬間、私の身体が地面から離れた。

え……お、お姫様抱っこ?

優心
「んな熱出てる状態で……行かせねー」


「っ、でも優心だってパトロール……」

朝陽
「し終わったとこ。だから安心して七聖」

翔悟
「まぁ、寝とけよ!な!」
っ……。

弱ってる姿なんか、見せたくない。

なのに……。


「あった、かい……」

優心
「っ……」

どうして……こんな、安心するんだろ。

たった1ヶ月、会わなかっただけ。

ダメだ……私の決意が、揺らぎそう。

何も考えるな……。

目を閉じると、そのまま眠ってしまった。



隙なんか……作りたくないのに。

どうして……力が、抜けるんだろ。
✶優心side✶

久しぶりに会った七聖は、細かった。

元から細いのに、さらに細くて。

顔だって、やつれてた。

天王の奴ら、なにやってんだよ……。

七聖のこと、大事じゃねーのかよ。

朝陽
「七聖の言う、守りたいものってなんだろ」

七聖の、守りたいもの………。

頭に、如月が浮かんだ。

チッ……従兄のくせに。

七聖を抱き上げたまま寮の敷地内に入ると日向と樹と遭遇した。

日向
「え!な、七聖!?」


「ど、どしたんすか!?倒れたんすか!?」