世界No.1暴走族・天海朧月 下


「たす、けて…………優心…………」

ポタッと涙が落ちた。

あ……もう、ダメかも………。

意識が遠のいてく。

私……死ぬんだ。

優心……みんな………。

自分勝手な私を、許して…………………。









✶優心side✶

冷凍庫のドアを何度も何度も蹴る。

ロックを壊すことさえ出来れば……!


「うぉりゃぁぁぁあ!!」

ダンっ!とロックのとこを蹴った。

すると、ヒビが入ってるロックが外れた。

よし!

すかさずドアを開けると、冷たい冷気が来た。

その中で、横たわる七聖を見つけた。


「七聖っ!!」

着ていた上着を身体にかけて、そのまま横抱きに抱き上げて出た。


「おい!七聖!起きろ!」

七聖
「………」
七聖は目を閉じたまま、動かない。

冷たい……っ。

幸い息はしている。

武道館の会場に戻ると、

朝陽
「っ優心!七聖は!?」

と、みんな駆け寄ってきた。


「ダメだ、完全に意識を失ってる!父さん!病院へ連れてこう!」

文也
「医者を呼ぼう!こうなることだと思って呼んでいた。一度、俺の家に行こう!瑠衣、いいだろ!」

瑠衣
「あぁ!頼む!」

ふたり、知り合いなのか?

って、今はそんなことどうでもいい!
日向
「総長!柊がいません!」

っなんだと!?

武道館を見渡すと、柊の姿はなかった。

翔悟
「クッソ……!なにがしたいんだよ!」

蒼馬
「とにかくここを出るのが最優先だ!」


「そうだな!」

俺は七聖を抱き上げたまま走った。

会場を出ると、長い廊下に出て。

こっからが長いんだよ……。

──ガシャーンっ!

え………?

いきなり窓ガラスが割れて、俺の方に破片が飛んできた。
ヤバいっ……!

背を向けるも、破片が首とかに刺さった。

っ……。


「七聖……っ!」

七聖を見ると、右目に破片が刺さってた。

文也
「まずい!急ぐぞ優心!」

優心
「お、おう……!」

七聖……っ!

頼む、死なないでくれ……………っ。



家に戻って、奥の部屋で医者が七聖を看てる。

文也
「マズイな……予想以上に事がやばい」
七聖……。


「俺は……七聖を信じてる」

しばらくして、医者が出てきた。


「先生!七聖は大丈夫ですか!?」

医者は目を伏せて、

「申し上げにくいのですが………帝七聖さんですが………………………」

次の言葉に、俺は目を見開いた。

その場が、凍った気がした。







✿七聖side✿

目を開けると、見たことのない景色だった。

え……私、生きてる?

ゆっくり身体を起こした。

どこだろ、ここ……。

私、冷凍庫にいたんじゃ……。

キョロキョロと部屋を見てると、窓ガラスに写ってる私が見えた。

…………え?

右目に包帯を巻かれてる私。

思わず立ち上がってしまい、身体がふらついて棚にぶつかった。

ガタッとした音で気がついたのか、部屋のドアが開いた。

優心
「七聖……」

優心に続いて、みんな入ってくる。
優心はズカズカと私の目の前まで来ると、勢いよく頭を下げた。

え……。

優心
「ごめん……っ!本当に、ごめんっ……!」


「ゆ、優心……?」

優心
「守りきれなかった……!俺が、いたのに!そばにいたのにっ……」

ど、どういうこと……?


「私……生きてる、の?」

琥太郎
「なに言ってるんだよ。生きてるだろ」

蒼馬
「真藤が七聖を助けたんだよ」

優心が……。

彩香
「七聖……っ、あなたの右目はね、失明してしまったの……!」
……え?

お母さん、今なんて……。

瑠衣
「窓ガラスの破片が刺さったけど、傷が深くてな……」

ってことは……私は今、左目しか見えない。

う、嘘……。

でも、みんなの反応を見る限り、そうだ。

頭がサーッ……と白くなった。

ボスっとベッドに座った。


「あ……はははっ、そっかぁ失明かぁ」

あははーと笑った。

顔を上げた優心。


「自業自得ってことだよ!右目使えないだけで、左目見えるし!ね!」