世界No.1暴走族・天海朧月 下

七聖を傷つけるなんて……許さねぇ!

待ってろ、七聖。




守ってみせる。何もかも。







✿七聖side✿

さっきから楽しんでる柊。

なにがそんな楽しいんだろ……。

にしても、頭痛い……クラクラする。

悪化してきてるかな?熱……。

こんな、簡単に連行されるなんて……!

私、なにやってんだよっ……。


「いやぁ〜、これから面白いことになるね」

「そうですね、総長!やっとです!」

武道館の、観客席にいる私たち。

──バンッ!

思い切りドアが開いて、たくさんの人が続々と競技をするとこに出てきた。

優心っ……みんな……!

「おおー、早いねー」

優心
「おい!七聖を返せ!」


「敵なのに、大事なの?」

私を人質にして、ナイフを向けた柊。

っ……。

朝陽
「七聖、病み上がりなのにまた再発してる」


「貧血持ちなのに……!!」

お父さんやお母さんに、舞衣さんまで。

舞衣さんの横にいるのは、優心のお父さんなのかな……。

優心
「大事に決まってんだろ……!この世界で、誰よりも大事な女だ!」

優心……っ。

「へぇ〜……じゃあ、戦ってよ。天王と海王でさ?勝った方に七聖ちゃんあげるよ」

え……?

琥太郎
「ふん、簡単だな。お前ら!」

う、嘘、戦わないでっ!


「待って……っ!!」

武道館に、私の声が響いた。


「お、願いっ……戦わないで!」

もし、海王が勝ったら?

白狐と戦わないといけない。

もし、天王が勝ったら?

白狐にやられるかもしれない。

蒼馬
「七聖?」

「ごめん……っ!私っ、天王と海王が戦うのなんてやだっ!」

琥太郎
「なに言ってんだよ。兄さんを殺した族だろ」

蒼馬
「そうだよ七聖!それに、天王の部下もやられてるんだよ」


「正気に戻れよ!海王は敵なんだ!」

そんなの……わかってる。

でも……。


「海王はっ……人を殺めない!」

優心
「七聖……」


「海王のみんな、あったかいよ!優しくて絆があって、無駄のないケンカなんかしない」
琥太郎
「呆れたな。天王の総長らしからぬ言動」


「だって!海王の総長は人思いなんだ!人の痛みを分かってあげれる人なんだよ……!」


「ハッハッハ!仲間割れ?いいねいいねぇ、もっとやりなよ!」

ハッ……。

これじゃ、仲間割れになる……。

こんなの……やだよ。

望んでない……っ。


「いやぁ〜、いいね!その顔!その顔が見たかった!」

っ……!


「悔しいなぁ?守りたいもの守れなくて。まぁ守りたいもの何個もあるなんて欲張りだ」
欲張り……。


「……の」


「えー?なに?聞こえない」

私は思いっきり足に力を入れて、ナイフを蹴りあげた。

幸い、足は縛られてないから難なくナイフを蹴飛ばした。


「っ……」


「守りたいもの守って、何が悪いの!」

あーもう……頭痛いしクラクラするし。

イライラ止まんない。


「私は欲張りだよ!!だってそうでしょ!?天王も海王も守りたいんだもん!戦ってなんかほしくない!優心となんか、戦えない!」
優心
「っ七聖……」

ポタッ……と、涙が出た。

そのせいか、溜めてたものが一気に溢れる。


「私はっ……天王が大好きだよ。唯一の琥太郎がいて、従兄の蒼馬がいて、蓮が、大和がいて。お父さんもお母さんもいて」

柊は呆然としてる。

言いたい……っ。

この感情、抑えきれないっ……!


「でも、海王も大好きなんだ!みんな、みんな大好きなの!それに……っ、初めて心から好きになった人守って、何が悪いの!」

蒼馬
「七、聖……」

琥太郎
「あのバカ……」

「私はもうとっくにわかってる!白狐がお兄ちゃんを殺したことくらいっ……!」


「ハハッ……元気だねぇ」


「そうだよ!いつだって強気で元気な帝七聖が天王の総長だ!わかってるよ、こんなの総長の資格ないって。みんなに幻滅されるってことも……」

彩香
「っ七聖……」


「今だって……すごく、怖い……。でも、私は逃げたりなんかしない!絶対白狐を倒す!お兄ちゃんの死の真相を見つけるの!あんたなんかに天王も海王も傷つけさせない!」


「へぇ……足、震えてるのに」

私が白狐だと決めつけてる理由。

だって、偶然にも程がある。