私
「いや、敵じゃなくてただのそこらへんのか弱い女の子だったらなぁとか思って」
あはは、と笑った。
そしたら……素直に、なれたかな。
彩香
「……七聖は、まったく笑わなくなったね。それのせい?七聖を苦しめてるのはなに?」
お母さん、鋭いな……。
私を苦しめてるものか……。
私
「……壁、かなぁ。あと立場」
総長同士なんか……嫌だ。
彩香
「お母さんも、あったなぁ……」
えっ……?
お母さんを見ると、懐かしそうな顔をしてた。
彩香
「お父さんねぇ……ホントは、帝組が代々結婚している家の娘さんと結婚するはずだったのよね」
え……お父さんが?
彩香
「だけど、図書室で本を読んでる私に一目惚れしてたみたいで……猛烈アタックしてきてたの。帝組は有名だから、みんな近寄ることは無かったけど……私は違った」
確かに……今でも、知れてる。
彩香
「お互い、後悔して悔やんでた。今の七聖と同じ。どうして帝組に生まれたんだろ、どうしてただの人間なんだろって……でも、諦めなかった」
お父さんにも……そんな過去が?
彩香
「だから七聖……私もお父さんもみんな、あなたの幸せを願ってる。だから、七聖は七聖らしくやればいいの」
私、らしく……?
ぎゅっと、優心のネックレスを握った。
彩香
「七聖にとって、きっとその人は命をかけるほど大事なのね」
っ……。
そう、だよ……。
私
「大事だから……っ守りたい!」
彩香
「七聖……」
じわっ……と涙が出た。
どうしても、守りたいっ……。
ううん、守ってみせるよ……。
お兄ちゃんとの約束、守れないけど。
でも……お兄ちゃん、見てて。
私は……天王も海王も、優心を守る。
全部全部、この手で守ってみせる……っ!
熱が引いたから翌日倉庫に行こうとした。
今日は天気がいいなぁ……。
なんて思ってると、
柊
「なーなーせーちゃん」
聞き覚えのある声が、後ろから聞こえた。
まさかっ……。
振り向くと、柊がいた。
っ……!
私
「なんの用?」
柊
「いやぁ、面白いこと思いついたんだよね。付き合ってくれる?それに」
面白いこと……?
柊
「ま、拒否権なんかないんだけど、ね!」
その瞬間。
──ガン!
油断していた私は後ろから何かで殴られた。
な、なにっ……!?
振り向くと同時に、温かいものが流れてきた。
触って確認すると、血で。
ドクンッ……!
バッドで、殴られた……やば、頭重い。
病み上がり、なのに……。
抵抗も忘れてると、男に担がれて車に入れられた。
元々貧血気味な私は、すぐに体調を崩す。
血を出した時限定だけど。
柊
「さぁ……面白いショーの始まりだ!」
✶優心side✶
七聖を送った次の日、倉庫には東雲もとい大和が来ていた。
大和
「凪〜!あの日から七聖笑わねーんだよ!」
凪
「そんなの知らないよ……俺らから引き離したのはそっちじゃんー?」
大和
「幼なじみだろ!?そんなこと言うなー!」
騒がしいな……。
つか、
俺
「お前、何しに来たんだよ!」
大和
「んなの、相談だよ!お前らのこと潰す気だった七聖が、帰ってきた途端ぼんやりしてるしよー!かと思えば、急になんかのスイッチが入ってるし!」
……そうだったのか。
凪
「七聖、笑ってなかったんだ?」
大和
「おうよ!真顔!蒼馬が心配して心配して琥太郎なんかつめてーし!双子なのに」
仲間割れか……?
しょうもねぇな……。
翔悟
「なぁ!なんか七聖がやけに俺ら海王と白狐を接触させないようにしてんだけど!なんか理由あんの!?」
大和
「知るかよ!俺に聞くなぁァァ!」
朝陽
「一応情報管理係なんだよね?」
ったく……。
その時、俺のスマホが鳴った。
誰からだ?
見てみると、七聖からだった。
俺
「っ七聖!?もしもし?」
ビデオ通話を受けると、画面が出た。
朝陽やみんなも、それを見た。
っ……。
柊
『ざーんねーん!俺でしたぁ〜』
大和
「コイツっ、白狐の……!」
凪
「大和黙って!」
柊は後ろを映した。
そこには……。
俺
「っ七聖!?」
縄に縛られ口にガムテを貼られ、頭から血を流してた。