世界No.1暴走族・天海朧月 下

七聖……。

頼むから、もう一度目を覚ましてくれよ。

これからもずっと……そばにいたい。

お前以上の女なんて、いないんだよ。

俺の眼中、七聖だけなのに……。

俺は願いを込めるように七聖の手を握った。
✿七聖side✿

目を開けると、いつかの天井が見えた。

ここ……どこだっけ。

身体を起こそうとするも、力が入らない。

私……夢を見てるのかな。

チク、タク、と時計の音が聞こえる。

私、地下にいたはずなのに……。

今は月明かりのお部屋にいて、時計の音を聞いている。

私、死んだのかな……。

なんとか部屋を見渡そうと目線を下げると、


「え……?」

私の手を握って寝てる、優心がいた。

え……優心?本当に、優心なの?

「優心……?優心」

何度か呼ぶと、優心の顔が上がった。

優心
「ん…………え、七聖?」

私の手を握ってない方の手で目を擦った優心。

優心
「っ七聖!?大丈夫か?わかるか?」

っ……優心だ。


「わ、私……死んでないの?」

優心
「生きてるよ……っ!よかった、七聖……」

はぁーっと息を吐いた優心。

どうして……。


「私、死にかけで地下に……」
優心
「俺が楓?って奴を再起不能にして問い詰めたんだよ。んで琥太郎と……ってそう!疾風さんが七聖の場所を教えてくれたんだよ!!」

……え?

今、疾風さんって言った?


「お、お兄ちゃん……?」

優心
「そう!急に倉庫に来たんだよ!兄ちゃんが連れてきたんだ!」

お兄ちゃん……帰ってきたんだっ。


「よかった……あ、でも白狐は……」

優心
「俺の話聞いてた?全員一人残らず再起不能にした。抗争は俺らの勝ち」

っ……よかった。


「爆弾で……っ、みんなが死んじゃうと思った」
見ると、優心は少ししか怪我してないみたい。

……あ。

起きてからちょっと経ったから、力出てきた。

ゆっくり身体を起こすと、優心が支えてくれて座ることができた。

あれ……?


「ゆ、びわ………」


「……あれからずっと、七聖を探してた。頭ん中七聖のことしかなくて……」

触れる優心の手が、温かくて優しい。

っ……なんで。


「私、たくさんひどいこと言ったよ……。優心のこと、突き放した……」
優心
「……そうだな」


「優心とみんなが死ぬなんて嫌だったからたくさん傷つけた……。やっぱり私は、守り方をそれしか知らなくて……」

優心
「……前回よりもタチ悪いけどな」

そう言う優心は、苦笑いしてて。

私を見る瞳が、あったかかった。


「そんな私なのに……優心は、私でいいの?」

優心
「だーかーらー、七聖じゃないとダメなんだって言ってんじゃん。何回言わせんの?」

ギシッと優心がベッドに座ってきた。

優心
「俺は、七聖のことが好きなんだ。心底お前に惚れてんの」
優心……。

ゆっくりと優心が近づいてくる。


「なんで怒らないの……?」

優心
「なんでだろうな……俺もわかんない。わかんないけど……今、すっげぇ安心して、ドキドキしてる」

っ……。


「優心……っ、あい、会いたか、った……」

震える手で、優心の手を握った。

優心
「もう一度、俺と付き合って七聖。もう二度と離さないから」

チュッ、と手の甲にキスをされた。

優心……優しすぎるよ。

優心
「これからも、たくさんデートしたり思い出作ろう。俺の未来にはお前がいてくれねぇとダメなの」

「っそんなの、私だってそうだよ……!優心とずっとずっと一緒にいたいの。嫌いなんて微塵も思ってないの……っ。どうしようもないくらい好きなの。大好きなのっ……」

溢れ出る涙を、拭ってくれる優心。

もう、離れたくない……。

優心
「泣くなよ……七聖」


「ん……っ、優心……」

優しいキスをされる。

もう、涙止まんない……。

会いたかった。触れたかった。

もう一度、名前を呼んでほしくて。

私を抱き締めて、離さないでほしくて。

ただただ、会いたくてたまらなかったんだ。
優心
「はー……マジで好き」

ギュッと抱き締められる。

あったかい……っ。

もう二度と、離れないよ……。

優心
「元気になったら、またどっかデートでも行こうか七聖」


「え!いいの?」

優心
「おう!そのためには元気になんねぇとな!」


「あはは……頑張る」