ギュッと指輪を握りしめた。
日向
「……七聖が総長嫌いになりますかね?」
イライラする………っ。
なんで、俺のそばにいねぇんだよ……!
「お、お兄ちゃんっ!」
その時、階段の方から声が聞こえた。
見ると、日向の妹雫ちゃんで。
日向
「っ雫!?」
雫
「えへへ……き、来ちゃっ、た」
……?
雫ちゃんはいつも施設に帰っている。
なのになんで……。
樹
「どしたんだよ雫?今日は来る日じゃ……」
雫
「ぅ、えっと……」
明らかに目を逸らした雫ちゃん。
……まぁいいや。
俺
「とにかく、七聖の家行ってくる。納得いかないから」
朝陽
「暴力はやめなよ?」
俺
「俺が七聖に手を上げるかよ!そんなことしねぇから!」
ソファから立ち上がって、バイクの鍵を手に取った。
階段のとこにいる雫ちゃんに近づいた。
俺
「雫ちゃん、ごめん避けてくれる?」
雫
「っ……びゃ、白狐って、この前私と樹くんを攫った族ですよね……」
え?
俺
「そうだけど……」
雫
「っ、殺しとかするんですか?」
……何をそんな焦ってるんだ?
樹
「七聖の兄貴を殺したんだよ。柊は」
その瞬間、雫ちゃんの顔色が変わった。
雫
「っそんな……どうしよう、私……」
……?
日向
「雫?何かあったの?だから来たの?」
雫ちゃんに優しく聞いた日向。
雫
「っ……な、七聖さんがっ、柊って人と車に乗ってどこかに行ったんです!!本当は言わないでと頼まれたんですが……七聖さん、殺されるかもしれませんっ……!」
っ……は?
樹
「おい!それどういうことだよ?」
雫
「たまたま七聖さんの学校の裏を通っていたら黒塗りの車に乗ろうとしてる七聖さんと柊さんを見つけたんです。私を見た七聖さん、慌ててて……」
……柊とどういう関係なんだよ。
なんで七聖、抗争前に……。
雫
「柊さんに殺される前に、この倉庫に行ってと背中を押されて……。すごく泣きたそうな顔をしてましたっ」
っ……まさか。
俺
「殺されに行ったってことか……?」
朝陽
「それやばいよ!早く探さないと!」
凪
「大和!どんな手を使ってでも倉庫を見つけ出そう!」
大和
「おう!」
俺は階段から下にいるみんなを見下ろした。
すぅー、と息を吸う。
俺
「お前らぁぁぁぁぁあっ!」
倉庫中に響かせると、みんなが俺を見上げた。
俺
「七聖を探せ!今すぐだ!見つけたら即刻俺に連絡!白狐のメンバーがいたら捕まえろ!これは総長命令だ!」
七聖……お前は本当に、なんでそばに居てくんねぇんだよ……っ!!
「「わかりました!!!」」
下っ端たちはそう言うと、ゾロゾロと倉庫を出ていった。
俺も探しに行かないと……!
そう思って階段に足をつけると、
琥太郎
「おい優心!どこに行く?」
と、呼び止められた。
蒼馬
「総長が動くのは危ない!」
危ない、って……。
俺
「七聖が殺される方が危ないだろ!それに、父さんたちに言って組の奴らに協力してもらうだけだ!!琥太郎、蒼馬!お前らは帝組の説得を頼んだ!」
俺はそう言って、一気に階段を降りた。
家に戻って、父さんたちに問い詰めた。
俺
「なぁっ、婚約破棄ってどういうことだよ!」
文也&舞衣
「……………え?なにそれ」
キョトン、としたふたり。
………は?
剣
「なにそれ?お前降られたの〜?」
俺
「………潰すぞ」
文也
「俺は何も聞かされてないけど?ってか、七聖ちゃんが優心を降ったのか?」
……皮肉だけど、頷いた。
舞衣
「ありえないわよ!七聖ちゃんは優心のこと好きよ?すごく」
俺
「……白狐に連れてかれた。だから今七聖のこと探してるんだよ」
文也&舞衣&剣
「は、はぁっ!?どういうこと!?」
時間ないけど……。
俺は倉庫であったことを一から説明した。
3人とも口を開けて驚いてたけど……。
俺
「だから、帝組にも俺ら真藤組にも協力してほしいんだ。七聖が死ぬなんて耐えられない」
文也
「そんな事ならもっと早く言えよ!こっちは大丈夫だから、ご飯だけ食べてくか?」
俺
「いや、いい。もう出るから」
またバイクの鍵を持って、玄関に向かった。
舞衣
「優心……七聖ちゃんのこと守ってね。七聖ちゃんはあんたのこと大好きだから」
……嫌いって言われたんだけどな。
でも……。
俺
「守るって決めたんだ。手放したりせずにそばにいるって……」
七聖の指輪を見つめた。
今は俺の指にいるけど……。
観覧車での七聖が、初めてをくれた七聖が、不安になりながらも俺にすがってた七聖が。
頭から、離れない……。
俺
「絶対……見つけてやる」
舞衣
「……行ってらっしゃいな!優心!!」
母さんに背中を押された。
……よし。
俺のお姫様を取り返しに行きますか。