これで、柊に殺られるのは私だけ。
私だけで……終わらせれる。
優心……大好きだったよ。
これからもずっとずっとそばで優心の笑顔を見たかった。
一緒にたくさん、思い出作りたかった。
デートだって、まだ1回しかしてない。
でも……いいんだ。
私はこれを思い出にできる。
優心と出会えたことが、私の幸せだから。
……幸せになってね、優心。
さよなら、私の初恋。
学校裏に行くと、柊が待ってた。
柊
「いやぁ、まさかこんな早く殺れるとはね」
私
「……早く乗せて」
柊
「はいは、」
「……七聖さん?」
……え?
振り向くと、日向に似てる女の子がいた。
この子……雫ちゃん?
私
「雫ちゃん……」
雫
「わぁっ、やっぱり七聖さん!隣の方は?」
あ………やばい。
今、こいつがいるの忘れてた。
柊
「七聖ちゃんの友達?」
私
「この子は関係ない。早く乗せて」
雫
「どこに行くんですか?」
っ……まずい。
あまり長くいると、この子まで狙われる。
私は雫ちゃんの耳に口を寄せた。
私
「この人に殺される前に、早く優心のいる倉庫に行って。あと、私がいること言わないで」
雫
「えっ?わ、っ」
トン、と雫ちゃんの背中を押した。
私
「柊、行くよ」
柊
「わかった〜」
ホッ……。
私は車に乗って、スマホの電源を切った。
………みんな、ばいばい。
✶優心side✶
──ドサッ!
倉庫の3階にあるソファに座った。
七聖あん野郎……指輪残しやがって。
翔悟
「おい優心!いいのかよ?七聖!」
凪
「しかも今、白狐との抗争控えてるのに」
琥太郎
「この時期にひとりで行動とか危ないだろ」
大和
「でも一番やべぇのは、誘拐だぞ!白狐の倉庫なんかわかんねーのに!」
イライラする……何もかも。
蒼馬
「優心……」
俺
「うるせぇよお前らっ……!!黙ってろ!」
ギュッと指輪を握りしめた。
日向
「……七聖が総長嫌いになりますかね?」
イライラする………っ。
なんで、俺のそばにいねぇんだよ……!
「お、お兄ちゃんっ!」
その時、階段の方から声が聞こえた。
見ると、日向の妹雫ちゃんで。
日向
「っ雫!?」
雫
「えへへ……き、来ちゃっ、た」
……?
雫ちゃんはいつも施設に帰っている。
なのになんで……。
樹
「どしたんだよ雫?今日は来る日じゃ……」
雫
「ぅ、えっと……」
明らかに目を逸らした雫ちゃん。
……まぁいいや。
俺
「とにかく、七聖の家行ってくる。納得いかないから」
朝陽
「暴力はやめなよ?」
俺
「俺が七聖に手を上げるかよ!そんなことしねぇから!」
ソファから立ち上がって、バイクの鍵を手に取った。
階段のとこにいる雫ちゃんに近づいた。
俺
「雫ちゃん、ごめん避けてくれる?」
雫
「っ……びゃ、白狐って、この前私と樹くんを攫った族ですよね……」
え?
俺
「そうだけど……」
雫
「っ、殺しとかするんですか?」
……何をそんな焦ってるんだ?
樹
「七聖の兄貴を殺したんだよ。柊は」
その瞬間、雫ちゃんの顔色が変わった。
雫
「っそんな……どうしよう、私……」
……?
日向
「雫?何かあったの?だから来たの?」
雫ちゃんに優しく聞いた日向。
雫
「っ……な、七聖さんがっ、柊って人と車に乗ってどこかに行ったんです!!本当は言わないでと頼まれたんですが……七聖さん、殺されるかもしれませんっ……!」
っ……は?
樹
「おい!それどういうことだよ?」
雫
「たまたま七聖さんの学校の裏を通っていたら黒塗りの車に乗ろうとしてる七聖さんと柊さんを見つけたんです。私を見た七聖さん、慌ててて……」
……柊とどういう関係なんだよ。
なんで七聖、抗争前に……。
雫
「柊さんに殺される前に、この倉庫に行ってと背中を押されて……。すごく泣きたそうな顔をしてましたっ」
っ……まさか。
俺
「殺されに行ったってことか……?」
朝陽
「それやばいよ!早く探さないと!」
凪
「大和!どんな手を使ってでも倉庫を見つけ出そう!」
大和
「おう!」
俺は階段から下にいるみんなを見下ろした。
すぅー、と息を吸う。
俺
「お前らぁぁぁぁぁあっ!」
倉庫中に響かせると、みんなが俺を見上げた。
俺
「七聖を探せ!今すぐだ!見つけたら即刻俺に連絡!白狐のメンバーがいたら捕まえろ!これは総長命令だ!」
七聖……お前は本当に、なんでそばに居てくんねぇんだよ……っ!!
「「わかりました!!!」」
下っ端たちはそう言うと、ゾロゾロと倉庫を出ていった。