離れたくない……。
今は制服を着てる私たち。
でも、違う学校の制服で……。
家も遠くて、ふたりになれない。
寂しいとか言えたらな……。
優心
「急に甘えられると調子狂う……」
私
「あ、ごめん……」
やっぱり迷惑か……。
離れようと腕を緩めると、後頭部に優心の手が添えられた。
っ……?
優心
「離れるなよ……七聖」
私
「んっ……!?」
抱き締められたまま深いキスをされる。
あぁ……このまま、時が止まればいいのに。
私
「ん、はぁっ……優心」
優心
「っん?」
私
「……離れたくない」
優心
「っちょ……、」
ドサッと優心を勢いで押し倒した私。
じわっと涙が出てきた。
優心
「……七聖?」
私
「……不安、だよ………」
ダメだって、わかってる。
優心たちの前で、そんなこと言っちゃ優心たちを不安にさせるだけだって。
分かってる、けど……。
私
「これからもずっと、優心といたいのに……白狐と何かあったら嫌だ」
優心
「……ははっ、そんなに俺のこと好きで好きでたまらねぇんだ?へぇ」
私
「……うん」
優心
「っ……なんだよ、いつもみたく言い返してこないのかよ!」
っだって……。
みんながっ、て考えてら止まらなくて。
胸が変なざわざわするんだもん。
私
「……みんなのとこ戻る」
優心
「っ待てよ!」
立ち上がった私の腕を掴んだ優心。
その衝撃で、思いっきり優心の胸に突撃した。
いったぁ……っ。
私
「ごめん優心っ、痛かった?」
優心
「俺の心配かよ……。アイツら今はしゃいでるから後ででいいじゃん。今はふたりきりでいたいしな!」
っ……。
優心もどちらかといえばはしゃぐタイプだと思うけど。
でも……こうして繋いでくれてる手に、すごく安心する。
優心
「七聖はもっとわがままになれよ!俺の彼女なんだから彼氏に甘えろ!」
私
「……充分なれてると思うけどなぁ」
前の私は、気を張ってたし。
優心にしか、わがままも甘えたりもしない。
私
「いい景色だね……」
今は、気づかないふりをしよう。
この胸のざわつきに。
✿七聖side✿
翌日、私はみんなと倉庫に向かってた。
といっても、蒼馬と琥太郎とだけど。
私
「あ!やばい、学校にスマホ忘れてきちゃったや!」
琥太郎
「はぁ?なんでそんな貴重なもんを……」
蒼馬
「まぁまぁ。俺も一緒に行こうか?」
うう、それは申し訳ない……。
私
「ううん!すぐだし大丈夫!!ふたりは先に倉庫行っててよ。真っ直ぐ向かうから!」
私はふたりにそう言って、学校へと走った。
スマホは机の中にあって、すぐ学校を出た。
夏休み明けでも、まだ暑いなぁ……。
なんて思ってると、
柊
「なーなせちゃん」
と、後ろから名前を呼ばれた。
この声……。
振り向くと、柊と隣に見たことのない男の人が立ってて。
っ……会いたくないのに。
柊
「そんな目で見ないでよ〜。あ、こっちは俺の兄貴だよ」
楓
「こんにちは七聖ちゃん?俺は楓」
楓……。
この人が、よく知りもしない男を殺した……。
ってことは……殺人鬼と殺人鬼の弟といるってこと?私。
私
「何の用?」
柊
「今日は取引しようと思って〜」
……取引?
柊
「俺ら、爆弾テロしようと思ってさ」
私
「っは……?ば、爆弾テロ?そんなの、普通の人間ができるわけ、」
楓
「普通の人間は、ね」
意味深に笑った楓。
なに……?
柊
「抗争のために武器も揃えたんだよね。銃にあとは爆弾に金属バット大量」
っ……。
天海朧月は、素手だ。
そんな卑怯なことしない。
私
「取引の内容はなに……?」
私が聞くと、気持ち悪く微笑んだ柊と楓。
似てる……。
柊
「俺ら白狐のターゲットは帝七聖ちゃん、君になったんだよね」
……は?
楓
「要は、天海朧月に爆弾テロと武器とかで痛めつける代わりに君だけは助けてあげる」
コイツ、何言ってんの……?
爆弾テロなんかしたら、みんなが……。
柊
「七聖ちゃんが俺らの所に来て大人しく死んでくれたら、天海朧月には何もしないよ?今のまま、真っ当勝負してあげる」
っ……。
私が死ぬ選択をしたら、みんなは助かる。