世界No.1暴走族・天海朧月 下

階段も真ん中にあって、見渡しやすい。

でもなぁ……もう夏休み終わったから、優心は寮に行くんだよね。

チラっと優心を見ると、階段を登ろうとしていた。

……寂しいな。

蒼馬
「どしたの?七聖」


「わっ!そ、蒼馬っ」

蒼馬
「なんかしょんぼりしてたけど」

うぅ、バレてた……。


「しょんぼりなんかしてないよっ」

蒼馬
「そう?ならいいけど。せっかく新しい倉庫なんだから、パーッとはじけようよ」

パーッと……。

「うん!あ、私せっかくだから倉庫の周りうろついてくる!」

蒼馬
「俺も行こっか?」


「ありがとう。でも大丈夫!!」

私はそう言って、倉庫を出た。

ふぅ……。

優心と同じ学校だったらなぁ……。

倉庫の裏に行くと、非常階段のようなものがあった。

……上まで続いてる。

登ってみようかな……どうしようかな。

行っていい場所かわかんない……。

優心
「上がんねーの?」


「びゃあっ!」
慌てて振り向くと、上機嫌な優心がいた。

び、びっくりした……っ。

てゆーか、


「優心、3階に行ってたんじゃ……」

優心
「七聖呼ぼうと振り向いたら蒼馬と話してたから気になって。外に行くし心配で来た」

見てて、くれたんだ……。

思ったよりも、優心に好かれてるみたいで嬉しい。


「……優心」

優心
「ん?」

……ダメだ、言っちゃ。


「なんでもない。みんなのとこ戻っててもいいよ?」
優心
「はぁ?俺が七聖置いて行くとでも思ってんのかよ?ただでさえ、もうしばらく一緒に夜過ごせないのに」

ドキッ……。

優心
「……行ってみる?上」

上を見た優心。


「うん!行きたい!!」

優心
「よし!じゃー行こうぜ!」

ふたりで階段を登って、屋上についた。


「わぁっ……!なにこれ、お部屋?」

といっても、小さいけれど……。

中に入ると、何もない空間だった。

優心
「瑠衣さんが、七聖気に入りそうだからって付け足した」
へぇ……お父さんが……。

窓からの景色も、すごくいい……。

優心
「観覧車で見た景色よりはあれだけど……見晴らしいいのってやっぱり最高だよな!」

ニコッと笑った優心。

優心は……抗争前なのに、なんでそんなにいつも通りでいられるのかな。


「優心……」

優心
「ん?うぉっ……!」

優心に抱きついて、ギュッと力を入れた。

優心
「ちょ、どしたんだよ?変なもんでも食ったのか!?七聖が急に抱きつくなんて変!」

おいおい、ひどい言われようだな。


「別に変なもん食べてないし……」
離れたくない……。

今は制服を着てる私たち。

でも、違う学校の制服で……。

家も遠くて、ふたりになれない。

寂しいとか言えたらな……。

優心
「急に甘えられると調子狂う……」


「あ、ごめん……」

やっぱり迷惑か……。

離れようと腕を緩めると、後頭部に優心の手が添えられた。

っ……?

優心
「離れるなよ……七聖」


「んっ……!?」
抱き締められたまま深いキスをされる。

あぁ……このまま、時が止まればいいのに。


「ん、はぁっ……優心」

優心
「っん?」


「……離れたくない」

優心
「っちょ……、」

ドサッと優心を勢いで押し倒した私。

じわっと涙が出てきた。

優心
「……七聖?」


「……不安、だよ………」

ダメだって、わかってる。

優心たちの前で、そんなこと言っちゃ優心たちを不安にさせるだけだって。
分かってる、けど……。


「これからもずっと、優心といたいのに……白狐と何かあったら嫌だ」

優心
「……ははっ、そんなに俺のこと好きで好きでたまらねぇんだ?へぇ」


「……うん」

優心
「っ……なんだよ、いつもみたく言い返してこないのかよ!」

っだって……。

みんながっ、て考えてら止まらなくて。

胸が変なざわざわするんだもん。


「……みんなのとこ戻る」

優心
「っ待てよ!」
立ち上がった私の腕を掴んだ優心。

その衝撃で、思いっきり優心の胸に突撃した。

いったぁ……っ。


「ごめん優心っ、痛かった?」

優心
「俺の心配かよ……。アイツら今はしゃいでるから後ででいいじゃん。今はふたりきりでいたいしな!」

っ……。

優心もどちらかといえばはしゃぐタイプだと思うけど。

でも……こうして繋いでくれてる手に、すごく安心する。

優心
「七聖はもっとわがままになれよ!俺の彼女なんだから彼氏に甘えろ!」


「……充分なれてると思うけどなぁ」