世界No.1暴走族・天海朧月 下

しょうがないのはわかるけども。

七聖
「優心?寝ちゃった?」

静かだったからか、俺を見上げてきた七聖。


「ごめん、考え事。俺まだ眠くねぇし」

七聖
「……なに考えてたの?」

ムッと口を尖らせた七聖。

これは……ヤキモチか?

いや、可愛すぎるだろ……!


「……もっかいしたいなぁって」

冗談だけど……。

さすがに七聖、やばいだろ。

七聖
「えっ、それはちょっと……色々と無理」

「わかってるって」

……言えるかよ。

柊のこと考えないで、俺の事だけ考えてろなんて女々しいし。

柊に負けてるみてぇで嫌だし。

七聖
「……このまま時が止まればなぁ。朝が来なきゃいい、のに……」

……ん?

七聖を見ると、スヤスヤと眠った。

……不思議だよな。

端から見れば、両目見えてるみたいなのに。

右目は空いてるのに、見えてないなんて。

絶対柊を再起不能にしてやる……。

七聖の涙なんか……泣いてる姿なんか、見たくないんだよ。

好きな女には、笑ってて欲しい。
……でも、泣きたければ泣けばいいと思う。

我慢なんかしないで、素直に泣けばいい。

俺が……七聖の涙を拭うから。

七聖は疾風さんに一刻も早く会いたいんだろうけど……白狐が迫ってきてる今、会ったりなんかしたら危険すぎる。

必ず白狐を……柊を再起不能にして、疾風さんを見つける。

だからそれまで……。




「俺のそばで待ってろよ、七聖………」
✿七聖side✿

そんなこんなで夏休みも終わり、私たちの倉庫が完成した。

翔悟
「おーっ!めっちゃでっけぇー!」


「だな!早く入ろうぜ!!」

大和
「俺一番乗り〜!!」

やっぱりコイツら三つ子だな。

朝陽
「俺らも行こうか」

琥太郎
「だな」

蒼馬
「内装も綺麗だね」

優心
「前より過ごしやすいな……!」

中に入ると、天井も前より高くて3階建てになっていた。
階段も真ん中にあって、見渡しやすい。

でもなぁ……もう夏休み終わったから、優心は寮に行くんだよね。

チラっと優心を見ると、階段を登ろうとしていた。

……寂しいな。

蒼馬
「どしたの?七聖」


「わっ!そ、蒼馬っ」

蒼馬
「なんかしょんぼりしてたけど」

うぅ、バレてた……。


「しょんぼりなんかしてないよっ」

蒼馬
「そう?ならいいけど。せっかく新しい倉庫なんだから、パーッとはじけようよ」

パーッと……。

「うん!あ、私せっかくだから倉庫の周りうろついてくる!」

蒼馬
「俺も行こっか?」


「ありがとう。でも大丈夫!!」

私はそう言って、倉庫を出た。

ふぅ……。

優心と同じ学校だったらなぁ……。

倉庫の裏に行くと、非常階段のようなものがあった。

……上まで続いてる。

登ってみようかな……どうしようかな。

行っていい場所かわかんない……。

優心
「上がんねーの?」


「びゃあっ!」
慌てて振り向くと、上機嫌な優心がいた。

び、びっくりした……っ。

てゆーか、


「優心、3階に行ってたんじゃ……」

優心
「七聖呼ぼうと振り向いたら蒼馬と話してたから気になって。外に行くし心配で来た」

見てて、くれたんだ……。

思ったよりも、優心に好かれてるみたいで嬉しい。


「……優心」

優心
「ん?」

……ダメだ、言っちゃ。


「なんでもない。みんなのとこ戻っててもいいよ?」
優心
「はぁ?俺が七聖置いて行くとでも思ってんのかよ?ただでさえ、もうしばらく一緒に夜過ごせないのに」

ドキッ……。

優心
「……行ってみる?上」

上を見た優心。


「うん!行きたい!!」

優心
「よし!じゃー行こうぜ!」

ふたりで階段を登って、屋上についた。


「わぁっ……!なにこれ、お部屋?」

といっても、小さいけれど……。

中に入ると、何もない空間だった。

優心
「瑠衣さんが、七聖気に入りそうだからって付け足した」
へぇ……お父さんが……。

窓からの景色も、すごくいい……。

優心
「観覧車で見た景色よりはあれだけど……見晴らしいいのってやっぱり最高だよな!」

ニコッと笑った優心。

優心は……抗争前なのに、なんでそんなにいつも通りでいられるのかな。


「優心……」

優心
「ん?うぉっ……!」

優心に抱きついて、ギュッと力を入れた。

優心
「ちょ、どしたんだよ?変なもんでも食ったのか!?七聖が急に抱きつくなんて変!」

おいおい、ひどい言われようだな。


「別に変なもん食べてないし……」