俺
「なんで蒼馬とか他の男じゃなくて、俺を好きになってくれたの?」
七聖にそう聞くと、固まった。
え……まさか、理由ないとかじゃないよな?
七聖
「……離れてから気づいたんだよ、ずっと頭に海王と、優心のことしかなくて。優心に初めて名前を呼ばれた時、力が抜けた。なんだ、最初からわかってたんだって……」
ちょうど、俺が初めてこの家に来た時か。
七聖
「何度も忘れようとした。優心への想いを閉じ込めて、白狐と戦おうと……。でも、忘れられなかった……初めて好きになった人、忘れられるわけない……っ」
七聖……。
七聖
「蒼馬には最初から従兄としてしか見てなかったし天王のみんなも仲間としてしか見てなくてさ……初めて意識したの、優心だよ」
涙混じりにそう言う七聖。
なんだ……不安になることなんて、なにもなかったんだ。
俺は七聖をそっと押し倒して、キスをした。
七聖
「ん……っ」
俺
「優しくできないけど、愛してくれる?」
至近距離で言えば、俺の頬に手を添えられた。
七聖
「当たり前じゃん。痛いのなんかもうとっくに覚悟してるし、そんなことよりも優心ともっと深い関係になりたい。繋がりたい」
チュッ、とキスをされた。
張ってた俺の理性は簡単に切れ……。
俺たちはそのまま、何度も何度も愛し合った。
初めて好きな女と繋がったこの瞬間は、永遠に忘れられない。
俺
「ごめん、やり過ぎた?」
くたばってる七聖を抱き締めた。
七聖
「う……少し?」
俺
「やっぱり痛かったよな……」
七聖
「痛かったけど、でも、幸せだよ……」
柔らかな笑顔を見せた七聖。
う……ホントにコイツ、可愛すぎる。
でも……やっぱり、ケンカしてたあの姿を思い浮かべると今と真逆だな。
男なんか、簡単に倒してたのに。
今、俺に身を預けてくれる七聖は……心底幸せそうに笑ってる。
少しは俺だけを見てくれたかな……。
いくら不安とはいえ、柊のことを考えてるとか嫌なんだよ。
しょうがないのはわかるけども。
七聖
「優心?寝ちゃった?」
静かだったからか、俺を見上げてきた七聖。
俺
「ごめん、考え事。俺まだ眠くねぇし」
七聖
「……なに考えてたの?」
ムッと口を尖らせた七聖。
これは……ヤキモチか?
いや、可愛すぎるだろ……!
俺
「……もっかいしたいなぁって」
冗談だけど……。
さすがに七聖、やばいだろ。
七聖
「えっ、それはちょっと……色々と無理」
俺
「わかってるって」
……言えるかよ。
柊のこと考えないで、俺の事だけ考えてろなんて女々しいし。
柊に負けてるみてぇで嫌だし。
七聖
「……このまま時が止まればなぁ。朝が来なきゃいい、のに……」
……ん?
七聖を見ると、スヤスヤと眠った。
……不思議だよな。
端から見れば、両目見えてるみたいなのに。
右目は空いてるのに、見えてないなんて。
絶対柊を再起不能にしてやる……。
七聖の涙なんか……泣いてる姿なんか、見たくないんだよ。
好きな女には、笑ってて欲しい。
……でも、泣きたければ泣けばいいと思う。
我慢なんかしないで、素直に泣けばいい。
俺が……七聖の涙を拭うから。
七聖は疾風さんに一刻も早く会いたいんだろうけど……白狐が迫ってきてる今、会ったりなんかしたら危険すぎる。
必ず白狐を……柊を再起不能にして、疾風さんを見つける。
だからそれまで……。
「俺のそばで待ってろよ、七聖………」
✿七聖side✿
そんなこんなで夏休みも終わり、私たちの倉庫が完成した。
翔悟
「おーっ!めっちゃでっけぇー!」
蓮
「だな!早く入ろうぜ!!」
大和
「俺一番乗り〜!!」
やっぱりコイツら三つ子だな。
朝陽
「俺らも行こうか」
琥太郎
「だな」
蒼馬
「内装も綺麗だね」
優心
「前より過ごしやすいな……!」
中に入ると、天井も前より高くて3階建てになっていた。
階段も真ん中にあって、見渡しやすい。
でもなぁ……もう夏休み終わったから、優心は寮に行くんだよね。
チラっと優心を見ると、階段を登ろうとしていた。
……寂しいな。
蒼馬
「どしたの?七聖」
私
「わっ!そ、蒼馬っ」
蒼馬
「なんかしょんぼりしてたけど」
うぅ、バレてた……。
私
「しょんぼりなんかしてないよっ」
蒼馬
「そう?ならいいけど。せっかく新しい倉庫なんだから、パーッとはじけようよ」
パーッと……。
私
「うん!あ、私せっかくだから倉庫の周りうろついてくる!」
蒼馬
「俺も行こっか?」
私
「ありがとう。でも大丈夫!!」
私はそう言って、倉庫を出た。
ふぅ……。
優心と同じ学校だったらなぁ……。
倉庫の裏に行くと、非常階段のようなものがあった。
……上まで続いてる。
登ってみようかな……どうしようかな。
行っていい場所かわかんない……。
優心
「上がんねーの?」
私
「びゃあっ!」