世界No.1暴走族・天海朧月 下

彩香
「今日のデート、楽しかったみたいね〜」

瑠衣
「七聖の寝顔なんて、いつぶりだろうな」

優心は一度羽織ってたパーカーをかけて立ち上がり、どこかに行った。


「すっかり七聖ちゃんのペースにハマってんね優心は」

文也
「琥太郎くん、倉庫でもあんな感じ?」


「はい。そのせいで七聖のこと好きだった奴ら全員恨めしそうに見ながらも、ちゃんと見守ってますよ」

特に蒼馬とかな。

優心
「まぁこんな総長でも来てくれて感謝しかないけどなぁ」

戻ってきた優心の手には、プランケットが。

七聖の隣に座って、かけようとしたその時。
七聖
「ん〜……寒いぃ……」

ギュッ、と優心に寄っかかった。

めっちゃ無防備じゃん。

優心を見ると、

優心
「人を毛布扱いしやがって……」

呆れながらも、プランケットをかけてた。

しかも優心の肩がちょうど七聖の枕になってるし。

ホントにこのふたり仲良しだよな。


「よかったな、優心」

優心
「はっ?」


「好きな女の子からくっかれて嬉しいっ!て思わないの?」

優心
「……うっせぇ兄ちゃん。考えないようにしてんだからやめろよ」
文也
「俺の息子なら性欲強いと思うんだけど」

優心
「っ……やめろ!それ以上言うな!」

……もしかして。


「お前、七聖が好きすぎて抱けないとか?」

優心
「………たくさん不安にさせてるから、今七聖にそんな余裕ないの知ってる」

はぁ、とため息をついた優心。

優心
「ただでさえ、ケンカしなくなってから前の七聖じゃ考えられないくらい弱くなってる。柊に対して恐怖心抱いてるし……」

それは俺らも見てわかる。

優心
「……そのへん歩いてても、目の前から男とか歩いてきたら俺の後ろに隠れたりしてくるんだ。んなの見たら、守ってやりたくなんじゃん……」
今は安らかに眠ってる七聖。

思ったよりも……優心に頼ってるんだな。

なんか、安心したよ。

文也
「……あ、じゃあもう一緒に住んじゃえば?ふたり」

瑠衣
「そのためには寮を出ないとだよな。あ、学校転校してきたらどうだ?」

優心
「……七聖が嫌がるんですよ。俺を縛り付けたくないって……」


「七聖は優心想いだからな……」

彩香
「でも七聖のことをそこまで理解してくれて嬉しいわ。七聖はなんでも我慢してしまう子だから……」

舞衣
「今日だって、メイクしてあげたかったけど優心に引かれるから嫌だって。可愛く思われたいからって」
優心
「……七聖は元々可愛いから今日はすげぇ大変だったんだからな。すれ違う男ども彼女連れてるくせに七聖に赤面しやがってて」


「まぁ、七聖は無自覚だからな……」


「可愛いって言ってあげた?」

優心
「……」

小さく頷いた優心。


優心はすげぇ七聖を大切にしてるからな。

……兄さん、今、どこにいるんだ?

七聖に、頼もしい彼氏ができてんだぞ。

見に来いよな……兄さん。
✶優心side✶

七聖をおんぶして、離れに着いた。

ったく、スヤスヤ寝てんじゃねーよ。

合鍵で鍵を開けて、2階に行く。

ベッドに七聖を降ろして、少し考えた。

つか、服とか変えた方がいいよな?

いや、でもさすがにまた下着姿を見るわけにはいかない……。

……布団かけとくか。

そう思って布団を触った時。

七聖
「ん……?……優心?」

名前を呼ばれて七聖を見ると、寝ぼけた顔で俺を見てた。

起きたのか?


「おはよ七聖。着替えた方が……っ!?」
俺の腕を引っ張って、自分の方に引き寄せた七聖。

慌てて手をついた。

あっぶね!七聖潰すとこだった!

七聖
「えへへ……いい匂い」

ギューッと俺に抱きついてきた七聖。

っ……可愛すぎるだろ、これは。


「はぁ……抱きたい、そろそろ」

俺もベッドに入って、七聖を抱き締めた。

七聖
「………」

ん?無言?

七聖を見ると、またうとうとしてて。


「寝とけよ、七聖」
七聖
「んー……まだ、優心と起きてたい」


「やけに素直じゃね?なんで?」

七聖
「明日になったら、また倉庫行かなきゃいけないから……このまま、時間止まってほしい。いつまでも優心とこうしてたい」

不安なのか、抱きついてきてる手に力がこもってる。

……んで、こんな可愛いんだよ。

寝ぼけてんのも、最高すぎる。

どこまでも愛しいやつ……。

七聖
「……優心」


「ん?」

七聖
「眠気覚ましにお風呂行ってくる」
……は?

ゆっくり起き上がった七聖。

いや、危なくねぇか?


「今入ったら溺れるだろ」

七聖
「でも入りたい。ダメ?」

……しょうがねぇな。


「じゃあ、俺も入る。一緒に入ろ」

ふらついてる七聖を抱き上げた。

七聖は数秒黙ると、

七聖
「は、はぁっ!?な、ななっ、なに言って、」

と、テンパった。

そろそろ限界だし、俺。


「んで、ベッドで抱きたい。ダメ?」