世界No.1暴走族・天海朧月 下

翔悟
「そうだぞ!安静に」

ベッドから出ようとした七聖。

が、ふらついて倒れそうになった。


「七聖っ」

七聖
「っ離して!帰る!ここにいたくないっ」

ドサッと強引に座らせた。


「お前、自分の体調わかんねーのかよ!アホ!今は寝込んでろ!」

七聖
「やだっ……!私はっ、白狐を倒すの!天王の総長だからっ……もう、一度、みんなに、琥太郎に、お父さんに、認めてもらわなきゃなんないっ……!」

俺の服をぎゅぅっと掴んだ。

七聖
「海王にはっ、白狐に近づかせない……!私が白狐に近づかないと……」
は……?


「おい、なに言ってんだよ!?」

七聖
「そのまんまっ……!」

意味わかんねぇ……。


「俺は……七聖の全部、知りたい」

ぎゅっと掴まれてる手を優しく握った。

七聖
「っ、離して……」


「なにも知らない……!なんで男装してまで海王に来たのかも、なんで俺らにすがったのかも、なにを守りたいのかもわかんねぇ!」

朝陽
「ちょ、優心。今七聖は体調が……」

七聖
「……ただ、あんたらを潰すためだよ」
え……?

七聖はそっと、立ち上がった。

七聖
「海王は敵でしかないの。私は無駄なケンカはしたくない。……できないんだよ」

無理だと気づいたのか、座った。

できないって………。

七聖
「海王と……やりたくない」

……まさか。


「俺と……戦えないってことか?」

七聖
「っ……そんなわけっ、」

頭を押さえた七聖。

とにかく、休ませねーと……。

日向
「七聖、今は体調休めないと!」

「そうだぞ!じゃねーと守りたいもの守れなくなるぞ」

七聖はそれでも、立ち上がろうとする。

手間のかかる奴だな……。


「なーなせ。大人しくしねーとキスするよ。今度は深いやつ」

七聖
「っ……!?」

顔を真っ赤にした七聖。

急いで布団をかぶった。

よし、分かりやすい奴だ。

一同
「はっ……はぁぁぁぁぁぁあっ!?」

俺&七聖
「うるさ……」

そう言うと、翔悟に胸ぐらを掴まれた。
翔悟
「どどどっ、どういう事だ!ふたり付き合ってんのかよ!?おぉぉい!」


「いつからだよ!さっきも裸見たとか言ってたし……!」


「いや、バスタオル巻いただけの……」

朝陽
「同じでしょ!ありえな……」

日向&樹
「総長…………………」


「そんな目で見るな!誤解だ!」

みんなして俺を淫乱男として見るな!

七聖
「ってか、うるさいよ……」

日向
「七聖、総長好きなのー?」
ピクっと反応した七聖。

ふいっと目をそらして、

七聖
「言ったじゃん。誰も好きにならない。私には決められた人がいる」


「あれ……そのネックレス、総長の」

あ……。

七聖の首元を見ると、俺があげたネックレスがあった。

ちゃんとつけててくれたのか……。

七聖
「あ、これは、その……」


「俺がやったんだよ。如月から奪うために」


「確か、天王の副総長でしたっけ」

そんなことより……。

「七聖……もう寝とけ。な」

七聖
「……お願いがあるの」

ぎゅっと俺の手を掴んだ七聖。

力ねぇじゃんこいつ……。

七聖
「天王のみんなにバレないように、私の今の家に送って……」

離れのことか?


「いいけど……」

七聖
「ありがと……」

結局……教えてはくれないのか。

七聖の守りたいもの……なんだろうな。

教えてくれたら、いいのに………。
✹翔悟side✹

俺は今、何を見させられてるんだ……!?

この、優心と七聖から溢れ出るオーラ……。

俺だけじゃない、朝陽も凪も、肩を落としていた。

だって……。

七聖が、優心に頭を撫でられながら穏やかに眠っているから……。

さっきまで、張り詰めてたのに。

焦ったように、何かを守るように。

そんな七聖が、落ち着いて寝ている。

日向
「総長、本気で七聖が好きなんですね」

優心
「まぁ……最初から全部わかってたからな。七聖の正体」

ハハッと微笑んだ優心。
優心
「でも……やっぱり、七聖のことはわからないままなのかもな……」


「……でも、七聖はわかりやすいですよ」

確かに……。

七聖は、好き嫌いハッキリしている。

朝陽
「七聖は、どうして俺らと白狐を近づけさせたくないんだろうね」


「なぁ、一応天王の奴らに知らせとく?介抱してるって」

優心
「だから、七聖はバレたくないんだって」

優心は……最初から見破ってたんだ。

それを分かって、好きに……。

いつか、優心が言っていた。