優心
「まぁまぁ。ちょっと休むか?あ、そろそろパフェでも食う?」
はい、と水を渡してくれた優心。
うぅ、ずるい男め。
そんな優しいことをサラッとされたら、ますます惚れるじゃんか。
私
「た、食べる!」
優心
「よし!じゃあダッシュで行くぞ!」
まだまだデートは始まったばかり。
絶対、もっともっと楽しむんだから!!
✶優心side✶
私
「うっわぁ〜!パフェがハートたっぷり!」
と、語彙力のない興奮をしている七聖。
なんだよこれ、カップルシートって。
狭いし、七聖との距離近いし。
本当にカフェなのかよここ。
俺
「嬉しい?」
俺がそう聞くと七聖は、キラキラした瞳を向けてきた。
っ……。
七聖
「へへっ、うんっ!!」
無邪気に笑うその笑顔を見れるのは滅多にないよな。
やばい、写メ撮っちゃだめかな?
何も考えないで俺はスマホを取って、何枚も盗撮した。
いや、モグモグ食べてて可愛い……って、なにやってんだ俺!
そう思ってた時。
七聖
「いだっ……」
七聖が突然顔を歪めた。
俺
「おい、どうした!?」
七聖
「なんか金属入って……」
俺
「危ないだろ!出せ!」
仕方なく口から出した七聖。
……ん?
俺&七聖
「……指輪?」
──チリンチリン〜♪
店員
「お客様!おめでとうございます〜!!」
っ!?
突然現れた店員。
なんだ?
店員
「本遊園地には、ペアリングは1日に1回しか当たらないんです!そんなおふたりに、このペアリングを差し上げます!」
七聖
「ぺ、ペアリングってこれですか?」
七聖が持ってる指輪を見せた。
店員
「いえいえ、ちゃんとこの箱に入ってます」
店員ははい、と真紅色の箱をテーブルに置いて七聖から指輪を受け取った。
店員
「それでは、ごゆっくりなさいませ」
え……。
七聖と顔を見合わせた俺。
ペアリングって、こんな感じなのかよ!
「え〜、いいなぁあのカップル」
「確かジンクスがあるんだよな?」
「あ、あのペアリングを観覧車の頂上でつけて誓い合うと永遠に結ばれるんだよね!」
……王道だな。
七聖もそういうのしたがるのか?
七聖を見ると……。
七聖
「ん〜っ、このアイスおいひ〜っ!」
……モグモグパフェを食べてた。
…………え。
俺
「七聖?」
七聖
「ん〜?なぁに?優心」
ダメだ……今のコイツ、なにも聞こえてねぇ!
マジかよ!
パフェにジンクス負けてんだけど!?
どうなってんのコイツの頭……。
七聖
「はぁ〜、美味しかった♡優心!次はどこに行こうか!」
待って、食べてすぐ動けんの!?
俺
「あ〜……あ、巨大迷路あるらしいけど」
七聖
「巨大迷路!?行きたい行きたい!!」
まぁ、七聖が楽しそうだからいいか。
そんなことを思いながら、カフェを出るため会計をしようとしたとき。
七聖
「ちょっ!なに財布出してんの!!」
と、七聖が俺を止めてきた。
俺
「はぁ?払うからに決まってんだろ」
七聖
「なんで優心何も頼んでないのに払うの!私が払うからいいよ!」
でも、出かけるまで俺すっげー耳にタコ出来るほどデートマナー習ったけど。
俺
「俺が払うつってんだからいいんだよ!」
七聖
「っうぅ……あ、次!次は私が払うんだからね!絶対優心に財布出させないし!」
どんな意地だよ……なんて思いながらも、また俺とデートする気なのが嬉しい。
……俺もチョロい男だよな。
✿七聖side✿
そんなこんなで全アトラクションを制覇し、気づけば夕方になっていた。
優心
「あーっ、たくさん乗ったな!」
私
「……優心っ、最後にあれ乗ろうよ!」
私は大きな観覧車を指さした。
優心
「観覧車?いいけど」
私
「やったぁ!ダッシュだよダッシュ!!」
ふたりで観覧車に乗って、向かい合った。
わっ、思ったよりもゆっくりだ。
優心
「七聖が誘ってくんの全部絶叫系だったからなんか意外」
私
「なっ、そっちだって嫌がらせしてきたくせに」
あれから……お化け屋敷に連れてかれ変なピエロに遭遇し終始優心にくっついてた私。
私もすっかり普通の乙女になってしまったな。
………普通の、か。
それでも、帝組の娘ってことは変わらない。
どう逃げようとしたって目を背けたって、普通じゃない世界にいることも……。
私
「あ!見てみてっ、あれ優心たちの学校!」
優心
「お!本当だ!ってことはあれ寮だな!」
私は窓に手をつけたまま、口を開いた。
私
「ねぇ優心」
優心
「ん?」
私
「今日、デートしてくれてありがとね」