✶優心side✶
七聖は、ケンカをやめてから段々と弱くなっていってる気がする。
柊のせいか、その辺の男にも怯えてるように見える。
最近なんか、一緒に外を歩いてる時に前から男の集団が来たりなんかしたら俺の後ろに隠れるし。
本人無自覚だから、気づいてねーけど……。
さっきだって、柊が去ってからも俺にくっついてたし。
まさか……本当の七聖は、思ってたよりも臆病なのか?
ケンカして、天王の総長をやってる七聖じゃなくなったから、眠ってた本当の七聖が出てきてるとか……。
だとしたら……今の七聖は、どれくらい恐怖心を抱いてんだろ。
俺
「なぁ七聖」
七聖
「んー?」
ベッドでくつろいでる七聖は、目をつぶったまま返事をした。
俺
「もう俺、ここに住んでい?」
すると、パチッと目を開けた七聖。
七聖
「……ん?ここって?私のこの離れ?」
こくんっと頷いた。
意外と寂しがり屋だったりすんのかな?
ジーッと見つめ合う俺ら。
まだまだ、七聖のこと知らない。
七聖
「……優心は寮があるじゃん」
ぷいっと逸らされた。
あ……そうだった。
俺
「じゃあ、転校していい?」
七聖
「はぁ?んなのできるわけないじゃん」
俺
「じゃあ、また男装して通えよ!」
七聖
「嫌だよ!知ってる?あれ、胸隠しブラキツくて痛いんだからね!?ウィッグだって取れないようにピンとかでやんなきゃだし!」
そういや……。
つか、父さんなら転校させてくれそうだけど。
七聖
「優心は、寮に住まないと」
俺
「……七聖のそばにいたい」
部屋の電気を消して、七聖の横に寝転がった。
七聖
「今いるじゃん」
俺
「もっと彼氏らしいことしてぇんだって」
彼氏らしいことがなにかわかんねーけど!
七聖
「……充分、優心は彼氏以上だよ?」
ギュッ、と俺の胸にくっついてきた七聖。
不覚にも、胸がドキッと鳴った。
いや、だって七聖らしくない。
俺
「彼氏以上って?」
七聖
「普通の彼氏がなんなのかはわかんないけど優心はいつも私のこと見てくれてるから。私ですら気づかないことに気づいてくれて、いつも守ってくれてるし」
まぁ、本人気づかないから俺が守るんだけど。
七聖
「それって、普通できないと思う」
俺
「そうなのかな?わかんない」
俺も七聖も、初めてだし。
七聖
「不思議だよねー……優心がこうして抱き締めてくれてるだけで、すっごい落ち着く」
……コイツ、寝ぼけてんの!?
なんなの、小悪魔なのか!?
俺
「なぁ……キスしてもいい?」
七聖
「優心毎回聞いてからするよね」
可笑しそうに笑った七聖。
嫌々するのは嫌だろ!誰だって。
俺
「聞いてからの方がいっかなって……」
七聖
「彼氏なんだから、聞かなくてもいいのに」
なんだろ……付き合ってから、俺の方が必死な気がする。
彼氏なら攻めが普通だろ!
なんかムカつく……。
俺は七聖にキスをして、唇を舐めた。
いつもは触れるだけだけど。
七聖
「っ!?ちょ、ゆぅっ……ん」
深いキスをすると、身体をビクッと揺らした七聖。
初めての感覚に、酔いそうになる。
もっと、七聖と恋人っぽいことしたい。
早く、キスのその先をできたら……。
七聖は、そういうのしたいと思ってなさそうだけど……。
七聖
「はぁっ……ば、バカっ……バカバカバカ!」
涙目で俺を睨む七聖。
なんか色っぽい。
でも、
俺
「バカ連呼すんな!」
七聖
「うぅ……と、溶けるかと思ったぁ……」
え。
顔を両手で隠した七聖。
っ……。
やばい、最高に可愛いんだけど!!
これが、彼氏の特権ってやつなのか!?
そうなのか!
俺
「……七聖」
七聖
「……なに」
俺
「今の七聖、めっちゃ可愛い。好きだよ」
七聖
「っ……もう勘弁して……///」
彼女を照れさせるのも、彼氏の役目だよな?
その日、俺と七聖は夜が明けるまでキスをしていた。
✿七聖side✿
そしてデート当日!
舞衣
「うん!これでよしね!」
私
「ま、舞衣さんっ!本当に大丈夫ですか?こんな女の子ぽくて……」
今の私は、キュロットに可愛らしい黒のトップスを身につけていて。
髪型だって、いつもはしないウェーブ巻きに赤のカチューシャ。
に、似合わない……。
舞衣
「本当はメイクもしたいけど……」
私
「さ、さすがに優心に引かれます!」
舞衣
「あらそう?それじゃあデート頑張って!」
うぅ、恥ずかしい……。
舞衣さんに背中を押され家を出る私。
確か、待ち合わせはここの近くのコンビニだったよね。
そう歩こうとした時。
優心
「おい!彼氏を素通りすんな!」
声が聞こえて振り向くと、私の家の前に優心がいた。
えっ。
私
「優心!なんで……」
優心
「なんか心配だから待ってたんだよ!普通後ろ見るだろ!」
私
「見ないし!でも……ありがと」
チラッと優心を見ると、優心は私の服装を見て固まった。
………?