私
「でもいいや。日向、これ雫ちゃんと行ってきなよ!」
日向
「え!でも……」
私
「パフェなら、いくらでも食べれるし。雫ちゃんと楽しんできなよ!ね!」
私はそう言って、パーカーを羽織った。
樹
「どこ行くの?」
私
「ん?飲み物欲しくなったからコンビニに」
優心
「なっ、危ないだろ!俺も行く」
私
「だから、そんな過保護にならなくても……」
私、優心を縛り付けたいわけじゃないのに。
倉庫を出て、優心のバイクに乗った。
優心
「なぁ、お前さ……」
私
「ん?」
優心を見上げると、じっと見つめ返された。
?な、なに?
優心
「……いや、やっぱいい」
……?
しばらく走ると、何か違和感を感じた。
中々着かないな。
優心、迷子になったとか?
行先コンビニなのに。
それも、さっきから信号が赤になりそうになるたびに道を変えるし。
何かあったのかな……?
優心
「七聖、後ろ向くなよ。俺にくっついてろ」
突然そんなことを言ってきた優心。
後ろ?なにかいるの?
優心に抱きつきながらもミラーで後ろを確認すると、1台のバイクがいた。
……まさか、後をつけられてる?
優心
「チッ……タイミング悪いな」
やがて行き止まりになって、バイクを止めた。
私たちが降りると、つけてたバイクも止まってきた。
優心
「七聖、後ろにいろ」
私を背中で隠すように立った優心。
「鬼ごっこ楽しかったんだけどなぁ〜」
この声……!
そいつはヘルメットを外すと、ニッと笑った。
私
「柊っ……」
柊
「七聖ちゃん、右目失明したんだって?」
優心
「柊てめぇっ……!なんのつもりだよ!!」
私の右目、柊が……?
柊
「聞いたよ〜合併したんだって?なぁんか気緩んでそうだったからこうして気まぐれに鬼ごっこしてあげたってわーけ」
優心
「とか言って、この周り白狐で固めてるんだろどーせ!」
柊
「そんなセコいことしないよ。抗争は秋にしたいなぁ。じゃ、ばいばーい」
柊はそう言うと、バイクに乗ってまたどこかに行った。
な、なんだったの……。
優心
「……七聖?」
私
「え?」
優心
「怖いのか?」
優心の視線を辿ると、優心の袖だった。
あ、掴んでた……。
私
「……ごめん。思ったよりも怖いかも……」
優心
「七聖……」
私
「情けないね!これでもそこらの人達よりはすごく強いのに……あはは」
二度も攫われてると、さすがに人間は恐怖心を覚えるのか。
にしても……怖い。
お兄ちゃんだと確認もせずに人を殺めた奴の弟だもん。
その時、ギュッと温かい温もりに包まれた。
私
「優心……?」
優心
「しょうがねーからな!遊園地行ってやるよ」
………え?
私
「行きたくないんじゃ……」
優心
「お前がパフェ食いたいなら行くしかないだろ!七聖は我慢しすぎなんだよ!」
っ……。
どうして、優心は私のことを見透かすのかな。
全部……。
最初から、そうだったのかな。
優心
「ほら、帰ろうぜ」
私
「カッコつけんな、ばーか」
柊が何を考えてるのかわからない。
気まぐれなら、抗争が早まるかも……。
その時、優心は無事でいてくれるのかな。
✶優心side✶
七聖は、ケンカをやめてから段々と弱くなっていってる気がする。
柊のせいか、その辺の男にも怯えてるように見える。
最近なんか、一緒に外を歩いてる時に前から男の集団が来たりなんかしたら俺の後ろに隠れるし。
本人無自覚だから、気づいてねーけど……。
さっきだって、柊が去ってからも俺にくっついてたし。
まさか……本当の七聖は、思ってたよりも臆病なのか?
ケンカして、天王の総長をやってる七聖じゃなくなったから、眠ってた本当の七聖が出てきてるとか……。
だとしたら……今の七聖は、どれくらい恐怖心を抱いてんだろ。
俺
「なぁ七聖」
七聖
「んー?」
ベッドでくつろいでる七聖は、目をつぶったまま返事をした。
俺
「もう俺、ここに住んでい?」
すると、パチッと目を開けた七聖。
七聖
「……ん?ここって?私のこの離れ?」
こくんっと頷いた。
意外と寂しがり屋だったりすんのかな?
ジーッと見つめ合う俺ら。
まだまだ、七聖のこと知らない。
七聖
「……優心は寮があるじゃん」
ぷいっと逸らされた。
あ……そうだった。
俺
「じゃあ、転校していい?」
七聖
「はぁ?んなのできるわけないじゃん」
俺
「じゃあ、また男装して通えよ!」
七聖
「嫌だよ!知ってる?あれ、胸隠しブラキツくて痛いんだからね!?ウィッグだって取れないようにピンとかでやんなきゃだし!」
そういや……。
つか、父さんなら転校させてくれそうだけど。
七聖
「優心は、寮に住まないと」
俺
「……七聖のそばにいたい」
部屋の電気を消して、七聖の横に寝転がった。
七聖
「今いるじゃん」
俺
「もっと彼氏らしいことしてぇんだって」