世界No.1暴走族・天海朧月 下

✶優心side✶

久しぶりに会った七聖は、細かった。

元から細いのに、さらに細くて。

顔だって、やつれてた。

天王の奴ら、なにやってんだよ……。

七聖のこと、大事じゃねーのかよ。

朝陽
「七聖の言う、守りたいものってなんだろ」

七聖の、守りたいもの………。

頭に、如月が浮かんだ。

チッ……従兄のくせに。

七聖を抱き上げたまま寮の敷地内に入ると日向と樹と遭遇した。

日向
「え!な、七聖!?」


「ど、どしたんすか!?倒れたんすか!?」

「熱を出してるだけだ。俺の部屋に連れてく」

日向
「看病なら俺得意ですよ!」


「俺も!よく雫看病してるし!」

マジか……!

翔悟
「じゃあ行こうぜ!」


「一応静かにしなよ、翔悟……」

部屋に行って、ベッドに七聖を寝かせた。

いつぶりだ……七聖が、俺の部屋にいるのは。

日向
「じゃあ着替えさせましょうか!服はどこにあります?」


「汗かくだろうし、なるべく早く着替えさせましょう」
着替えか……。

確か、七聖の服がクローゼットにあったよな。

何も持っていかなかったから、七聖の荷物は一通りある。

翔悟
「はぁっ!?お、お前らに七聖の裸見せるわけねぇだろー!」


「アホ。別に下着は脱がないしょ」

そういや……七聖の身体は、華奢で綺麗だ。

この身体……誰にも見せたくない。


「全員部屋から出ろ。俺がやる!」

一同
「はぁっ!?」


「俺は、七聖のバスタオル巻いただけの身体見たことある。だから俺がやる」
相手が相手だから、刺激強いけど……。

みんなが部屋を出て、七聖を着替えさせた。

朝陽
「とりあえず、冷えピタ買ってきたよ」

はい、と俺に渡した朝陽。


「サンキュ」

七聖の額に貼ると、そっと目を開けた七聖。


「ん……あ、れ……?」


「七聖、大丈夫か?」

パチッと目が合った。

ゆっくりと身体を起こす七聖。

七聖
「ここ……寮?」

朝陽
「七聖、無理はよくないから寝てて」
翔悟
「そうだぞ!安静に」

ベッドから出ようとした七聖。

が、ふらついて倒れそうになった。


「七聖っ」

七聖
「っ離して!帰る!ここにいたくないっ」

ドサッと強引に座らせた。


「お前、自分の体調わかんねーのかよ!アホ!今は寝込んでろ!」

七聖
「やだっ……!私はっ、白狐を倒すの!天王の総長だからっ……もう、一度、みんなに、琥太郎に、お父さんに、認めてもらわなきゃなんないっ……!」

俺の服をぎゅぅっと掴んだ。

七聖
「海王にはっ、白狐に近づかせない……!私が白狐に近づかないと……」
は……?


「おい、なに言ってんだよ!?」

七聖
「そのまんまっ……!」

意味わかんねぇ……。


「俺は……七聖の全部、知りたい」

ぎゅっと掴まれてる手を優しく握った。

七聖
「っ、離して……」


「なにも知らない……!なんで男装してまで海王に来たのかも、なんで俺らにすがったのかも、なにを守りたいのかもわかんねぇ!」

朝陽
「ちょ、優心。今七聖は体調が……」

七聖
「……ただ、あんたらを潰すためだよ」
え……?

七聖はそっと、立ち上がった。

七聖
「海王は敵でしかないの。私は無駄なケンカはしたくない。……できないんだよ」

無理だと気づいたのか、座った。

できないって………。

七聖
「海王と……やりたくない」

……まさか。


「俺と……戦えないってことか?」

七聖
「っ……そんなわけっ、」

頭を押さえた七聖。

とにかく、休ませねーと……。

日向
「七聖、今は体調休めないと!」

「そうだぞ!じゃねーと守りたいもの守れなくなるぞ」

七聖はそれでも、立ち上がろうとする。

手間のかかる奴だな……。


「なーなせ。大人しくしねーとキスするよ。今度は深いやつ」

七聖
「っ……!?」

顔を真っ赤にした七聖。

急いで布団をかぶった。

よし、分かりやすい奴だ。

一同
「はっ……はぁぁぁぁぁぁあっ!?」

俺&七聖
「うるさ……」

そう言うと、翔悟に胸ぐらを掴まれた。
翔悟
「どどどっ、どういう事だ!ふたり付き合ってんのかよ!?おぉぉい!」


「いつからだよ!さっきも裸見たとか言ってたし……!」


「いや、バスタオル巻いただけの……」

朝陽
「同じでしょ!ありえな……」

日向&樹
「総長…………………」


「そんな目で見るな!誤解だ!」

みんなして俺を淫乱男として見るな!

七聖
「ってか、うるさいよ……」

日向
「七聖、総長好きなのー?」

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