世界No.1暴走族・天海朧月 下

七聖は俺を見上げると、安心したのか柔らかい笑顔を浮かべた。

ドキッ……。

やばい、不意打ち笑顔は心臓に来る。

そろそろ……いや、ダメだよな。

まだ付き合って1か月も経ってねぇのに、さすがに早いだろ!

キスだって、触れるだけなのに……!

七聖
「優心?眉間にシワ寄せてどしたの?」

無自覚な上目遣い……。


「べつに……」

七聖
「?」

七聖は、そういう……恋人のイチャつきみたいなこと、したくないのかな。

って、なに考えてんだ俺!
いや、でも、一応確認しとくか。


「なぁ七聖」

七聖
「ん?」


「俺のこと、彼氏として意識してる?」

七聖
「……え、うん。彼氏……じゃん?」

彼氏とは認識してくれてるな。

じゃあ……。


「男として、見てる?今だってキスとかできちゃうけど、そういうの考えたりしてる?」

七聖は少し顔を赤くすると、こくんっと縦に頷いた。

七聖
「恋人って、何するかわからないけど……優心になら、その……キスとか、嫌じゃない」

……やばい!俺の目おかしくなったか!?
七聖の周りに、たくさんのハートが見える!

いや、幻覚なんだろうけど!

これ以上抱きしめてると危ないな、色々。

そう思って身体を離した俺。


「じゃあ、もう寝るか」

七聖
「え、今の質問なんだったの?結局」


「べっつにー」

七聖は、知らなくていい。

その時になったら、俺が教えるから。

✿七聖side✿


「ひっなた〜!いっつき〜!ケンカしよ!」

翌日、私は倉庫で日向と樹にそう言った。

……が。

日向
「え!ケンカはダメでしょ!」


「お前アホか!俺らが七聖に怪我させるようなことするわけねーだろ!アホ!」

が、ガーン……!


「なにもそんな2回もアホって言うな!」

優心
「な〜な〜せ〜」

ギクッ……。

恐る恐る振り向くと、仁王立ちで私を見下ろす優心がいた。
優心
「お前、ふざけんな!なに右目見えねぇのにケンカしようとしてんだ!ケンカはもうしないって約束だろ!!」

うわっ、また来たよ説教!


「片目だけでもケンカできるし!」

優心
「お前はダメだ!万が一殴られたりでもしたらどうすんだよ!?ちゃんと女って自覚を持てよな!」


むぅ……。


「優心のケチ」

優心
「七聖がわからなさすぎだ!いいか?七聖はそりゃ強いけど、右を狙われたら危ない目に合うんだからな!?」


「もう!そんなお父さんみたいに説教しないでよ!優心は私の彼氏じゃないの!?」
優心
「はぁ!?彼氏だから心配してこう言ってるんだろ!?」

ムッカァ……。


「だからって過保護すぎるよ!もうどこにもぶつからないで歩けるようになったよ?」

優心
「またぶつかるかもしんないだろ!頼むからケンカはしないで!」

琥太郎
「おいおい、ふたりともそこまでにしろよ」

私と優心を引き離した琥太郎。

あ……。

朝陽
「ほんと、ふたり仲良しなのはいいけどケンカしすぎじゃない?」

蒼馬
「よく成り立ってるね……」
み、みんなして……。


「まだキス止まりなんだろ〜?」

翔悟
「そりゃケンカばっかになるよな!」

大和
「海王の先代は彼女5人だって!」


「なんで知ってんの大和……」

ま、マジか……剣さん、彼女が5人も。

キス止まりって……その先のこと、みんなはしてるの?

私、優心のこと待たせてるのかな。

優心
「つか、他人の恋愛事情なんか興味ねぇ!なにがよくて兄ちゃんのを……」

日向
「あ!そういえば、総長と七聖ってデートしたことあります?」
………デート?


「デートって確か、恋人がどこかに出かけることだよね?」


「総長としたことあんの?七聖」

優心と出かけたこと?

優心
「そういやなかったな……」


「だね……考えてなかった」

一同
(本当にキス止まりなのか……)

チラッと優心を見た。

夏休みの思い出って、優心にマニキュア塗ってもらったことくらいしかないかも?

日向
「そんなおふたりに、これプレゼントです!」

はい、と優心にチケットを2枚渡した日向。

「それなに?」

優心
「遊園地のチケットじゃん。えぇ、俺遊園地とか行きたくな……」

蒼馬
「じゃあ七聖、俺と行こうよ」

えぇ……。


「私、遊園地は行きたくな……」

翔悟
「なんでだよ!?なんでふたりして遊園地に興味がないんだよ!?」

なんでと言われても……。


「昔、迷子になったし……」

優心
「あんなメルヘンなとこ、無理!」


「あ、でもこれ、カップル限定ペアリングとパフェあるらしーよ?」