ギュッと拳を握った。
知りたい……お兄ちゃんのこと。
剣さんはジッと私を見ると、
剣
「なるほどねぇ……」
と呟いた。
……?なるほどって?
剣
「七聖ちゃん、疾風のことだけど……それはちょっとふたりで話したいな」
へ?
優心
「俺も行っちゃダメなのか?」
剣
「悪いな。七聖ちゃんとふたりじゃねーと話せないから。行こう、七聖ちゃん」
私
「は、はい」
私は立ち上がって、剣さんについていった。
連れてかれたのは、庭だった。
剣
「疾風は、俺にあるお願いをしてきたんだよ」
私
「お願い……ですか?」
剣
「そ。妹と弟に何かあったら頼むって」
え……。
剣
「たぶん、分かってたんだろうなぁ。白狐が自分を狙ってることくらい。天王の総長だし」
私と琥太郎に何かあったら?
何かって……なに?
剣
「でも七聖ちゃん、実を言うと疾風はまだ生きてるんだよ」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
………え?
剣さんを見ると、真剣な瞳で。
私
「い…今、なんて……」
剣
「疾風はまだ生きてるんだ。本当に」
生きて……る?
嘘……そんなの、嘘でしょ?
私
「っ白狐の柊は、殺したって……あの冷凍庫で死んだって………」
剣
「あれは罪を犯した他の族のこと。白狐は疾風に会ったことも無くて顔が認識できてなかった。だから疾風は生きてる」
別の人ってこと………?
待って……じゃあ、どこにいるの?
私
「お兄ちゃんはっ!?お兄ちゃんは、今、どこにいるんですか!?」
剣
「分からないんだ……突然失踪したんだよ。今も音信不通。最後に会ったのは俺だけど俺もわからない」
っそんな……!
じゃあ、私は何のために海王に潜入したの?
何のために、白狐に復讐するの?
なんのために…………。
足に力が入らなくなって、その場に崩れ落ちそうになった。
が。
優心
「おい!しっかりしろ!」
優心に抱き上げられて、我に返った。
剣
「げっ、優心!」
優心
「なんの話か知らねぇけど、七聖を傷つけるのだけは許さねーぞ!」
な、なんか誤解してる!
私
「違うよ優心!剣さん私になにもしてない!」
優心
「ならいいけど……」
チラッと剣さんを見た。
剣
「また今度話そうか、七聖ちゃん」
剣さんは切なそうな笑みを見せると、家の中へ戻って行った。
まだ、話したいことあった。
でも、頭が追いつかない。
お兄ちゃんは………生きてる。
今も、どこかで………。
✶優心side✶
翔悟
「なぁ……」
大和
「なんか……」
蓮
「やっぱり……七聖、なんかあったよな?」
翌日、今日は海王の倉庫に来ていた。
遠くにいる七聖を見ると、何かを考え込むような、闇に包まれるような感じで。
なんだ……?何があったんだよ!?
琥太郎
「一昨日は元気だったけど。優心、なんか知らないの?」
俺
「……わかんねぇ」
兄ちゃんに聞いても、わかんないの一点張りだしよ!
でも……七聖は、放っとくと壊れる。
すべて、我慢する不器用だから。
凪
「あれ、またなんか溜め込んでるよ」
朝陽
「……優心なんかした?」
俺
「なんもしねーよ!」
蒼馬
「とりあえず……どこかに行かないように見とかないとね」
……気になる。
明らかに、兄ちゃんのせいだろ。
俺
「七聖、お前なんかあった?」
夜、七聖のベッドでそう聞いた。
七聖はあからさまに肩を揺らすと、俺から目を逸らした。
七聖
「別に。なんもない」
そっけねぇな……。
……あ。
俺
「じゃあ、キスしていい!?」
七聖
「うん……っはぁ!?」
顔を赤くした七聖。
俺は七聖の腕を引き寄せて、唇にキスをした。
七聖
「んぅ……っ」
俺
「引っかかった」
七聖が睨んできたから、べーっと舌を出してそう言った。
少しは戻ってきたかな?
今まで……ひとりで、溜め込んでたんだ。
そりゃ、クセもつくよな……。
俺
「なぁ……何悩んでる?」
七聖
「っ……言えないよ」
俺
「なんでだよ?」
まただんまりか……。
俺
「なぁ、言ってくれねぇと守りたくても守れないことだってあんだよ」
七聖
「……ごめん」
俺
「今の七聖、泣きたいって顔してる」
七聖の頬にそっと手を添えた。
こんな瞳揺らしてて、放っとく方がおかしい。