世界No.1暴走族・天海朧月 下


「私はあんたらを裏切った……なのに、なんでそんなこと言ってくんの……?」

朝陽
「みんな、七聖が好きだからだよ」

それだけで……ここまでするの?


「私は……誰も好きにならないから、諦めて他の子探してよ」

優心
「お前が好きなのは俺だろ……!なんでそんな嘘を言うんだよ!?」

やめて……。


「……私は、海王じゃなくて直接白狐を倒すから。海王と戦うつもりはない」

優心
「はぁっ!?お前、それ危ないだろ!」


「危ないけど、命をかけても守りたいものがあるの!あんたらに邪魔されたくない!」
大声を出したせいで、頭がクラクラしてきた。

やば……立って、られない……。

でも、行かないと。


「じゃあ私、もう、行く……」

優心
「……行かせるかよ」

その瞬間、私の身体が地面から離れた。

え……お、お姫様抱っこ?

優心
「んな熱出てる状態で……行かせねー」


「っ、でも優心だってパトロール……」

朝陽
「し終わったとこ。だから安心して七聖」

翔悟
「まぁ、寝とけよ!な!」
っ……。

弱ってる姿なんか、見せたくない。

なのに……。


「あった、かい……」

優心
「っ……」

どうして……こんな、安心するんだろ。

たった1ヶ月、会わなかっただけ。

ダメだ……私の決意が、揺らぎそう。

何も考えるな……。

目を閉じると、そのまま眠ってしまった。



隙なんか……作りたくないのに。

どうして……力が、抜けるんだろ。
✶優心side✶

久しぶりに会った七聖は、細かった。

元から細いのに、さらに細くて。

顔だって、やつれてた。

天王の奴ら、なにやってんだよ……。

七聖のこと、大事じゃねーのかよ。

朝陽
「七聖の言う、守りたいものってなんだろ」

七聖の、守りたいもの………。

頭に、如月が浮かんだ。

チッ……従兄のくせに。

七聖を抱き上げたまま寮の敷地内に入ると日向と樹と遭遇した。

日向
「え!な、七聖!?」


「ど、どしたんすか!?倒れたんすか!?」

「熱を出してるだけだ。俺の部屋に連れてく」

日向
「看病なら俺得意ですよ!」


「俺も!よく雫看病してるし!」

マジか……!

翔悟
「じゃあ行こうぜ!」


「一応静かにしなよ、翔悟……」

部屋に行って、ベッドに七聖を寝かせた。

いつぶりだ……七聖が、俺の部屋にいるのは。

日向
「じゃあ着替えさせましょうか!服はどこにあります?」


「汗かくだろうし、なるべく早く着替えさせましょう」
着替えか……。

確か、七聖の服がクローゼットにあったよな。

何も持っていかなかったから、七聖の荷物は一通りある。

翔悟
「はぁっ!?お、お前らに七聖の裸見せるわけねぇだろー!」


「アホ。別に下着は脱がないしょ」

そういや……七聖の身体は、華奢で綺麗だ。

この身体……誰にも見せたくない。


「全員部屋から出ろ。俺がやる!」

一同
「はぁっ!?」


「俺は、七聖のバスタオル巻いただけの身体見たことある。だから俺がやる」
相手が相手だから、刺激強いけど……。

みんなが部屋を出て、七聖を着替えさせた。

朝陽
「とりあえず、冷えピタ買ってきたよ」

はい、と俺に渡した朝陽。


「サンキュ」

七聖の額に貼ると、そっと目を開けた七聖。


「ん……あ、れ……?」


「七聖、大丈夫か?」

パチッと目が合った。

ゆっくりと身体を起こす七聖。

七聖
「ここ……寮?」

朝陽
「七聖、無理はよくないから寝てて」
翔悟
「そうだぞ!安静に」

ベッドから出ようとした七聖。

が、ふらついて倒れそうになった。


「七聖っ」

七聖
「っ離して!帰る!ここにいたくないっ」

ドサッと強引に座らせた。


「お前、自分の体調わかんねーのかよ!アホ!今は寝込んでろ!」

七聖
「やだっ……!私はっ、白狐を倒すの!天王の総長だからっ……もう、一度、みんなに、琥太郎に、お父さんに、認めてもらわなきゃなんないっ……!」

俺の服をぎゅぅっと掴んだ。

七聖
「海王にはっ、白狐に近づかせない……!私が白狐に近づかないと……」
は……?


「おい、なに言ってんだよ!?」

七聖
「そのまんまっ……!」

意味わかんねぇ……。


「俺は……七聖の全部、知りたい」

ぎゅっと掴まれてる手を優しく握った。

七聖
「っ、離して……」


「なにも知らない……!なんで男装してまで海王に来たのかも、なんで俺らにすがったのかも、なにを守りたいのかもわかんねぇ!」

朝陽
「ちょ、優心。今七聖は体調が……」

七聖
「……ただ、あんたらを潰すためだよ」