優心
「ちげーよ!俺が七聖の爪に塗ってあげたいんだって!」
あ、そういうこと?
私
「じゃあお願い。右手やりづらくて」
はい、とマニキュアを渡した。
優心は私の右手を支えると、親指から塗っていった。
なんか……変なの。
私
「優心って、器用なんだ」
優心
「お前は不器用だけどな。守りたいものの守り方とか特に」
う……これは、根に持ってるな。
私
「……優心」
優心
「なんだよ」
あの日以来言ってないから……言おう。
私
「……好きだよ」
優心
「っ……!?おまっ、動揺させんな!」
おぉ、照れてる照れてる!
最近、優心は照れ屋だと気づいた。
私と同じ、うぶな反応がまた可愛い。
私
「ねぇ、なんで急に来たの?」
優心
「彼氏が会いたいと思って来ちゃダメか?」
私
「会いたくて来たの?」
優心
「まぁそんなとこ」
ふぅーん……。
優心
「ニヤニヤすんな」
私
「顔赤くするな」
優心
「してねーし」
私
「してるわアホ」
私たちって、なんでこんな言い合いになるんだろうか……。
私
「カップルって、もっとイチャコラすんじゃないの?」
優心
「それを俺に聞くのかよ……」
私
「え、彼氏じゃん?優心」
優心
「……じゃあなに、キスとかする?その先とかも?」
キスのその先……。
っ!?
優心
「ほら、墓穴掘ってんじゃねーぞ」
私
「………」
な、なにも言い返せない……悔しい!
私
「ねぇ優心……」
優心
「今度はなに?」
私
「白狐……そういえば、柊しか見てない」
ピタッと動きを止めた優心。
やっぱ、優心も気づいてたんだ。
優心
「……アイツは、まだ真当勝負する気じゃないんだろ」
真当勝負か……。
私
「……死なないで」
もう、誰も失いたくない。
大切な人、いなくなるなんて嫌だ。
優心
「安心しろって!俺は七聖を残して死んだりなんてしねーんだから!な!?」
優心……。
優心
「お前は信じて待ってればいーの!」
私
「……ふっ、ありがとう」
優心
「ほら、塗れたし後は乾かすだけ!」
落ち着かない。
でも……それはみんな同じなんだ。
夏。
蒸し暑さが、さらに私たちの心を……精神を、緊張させていく。
✿七聖side✿
優心
「なぁ七聖、お前の兄貴ってなんて名前?」
私のお部屋でくつろぐ優心。
夏休みになってから、優心は私の家に泊まるようになった。
私
「帝……疾風だよ」
優心
「………え、疾風ってあの疾風さん!?」
……?
私
「会ったことでもあんの?」
優心
「師匠に決まってんだろ!」
……師匠??
お兄ちゃんが?
優心
「あー……俺がまだ弱かった時、街歩いてたらチンピラとぶつかってさ。そん時に、素早く助けてくれたんだよ」
そんなことがあったんだ……!
さすがお兄ちゃんだなぁ……。
優心
「その時のケンカがすげーかっこよくて!兄ちゃんと親友だったのは後から知ったんだけどな!ふたりからケンカ教えてもらうようになったんだよ!」
……ん?
私
「優心……お兄ちゃんいるの?」
優心
「?言ってなかったっけ?いるよ!」
………えぇ!
私
「あ、会ったことない!」
優心
「まぁ、今海外にいるし……?」
えぇっ!
私
「……優心の家族に会いたいな。仲良くなりたいなぁ」
優心
「っ……」
最近、お父さんがよく一緒にご飯連れてってくれたりしてる。
でも、あんまり真藤家とは関わってないから。
優心
「まぁ、いいよ。会わせてやるよ!」
私
「怖い人だったりする?お兄さん」
優心
「いや?あ、ロリコンだけど。名前は剣」
剣(けん)かぁ……。
優心みたく、優しかったりするのかな。
……なんて。
優心
「あ!兄ちゃんに惚れんなよ!?」
私
「なっ!優心以外に惚れるわけないじゃん!」
優心
「お前はミーハーそうだから心配なんだよ!」
あーもう!うるさいなこの男は!
私は優心の頬を両手で挟んだ。
私
「私はっ、優心しか見えてないんだよ!現に天王も海王も男しかいないのに、私が選んだのは優心だもん!優心にしかドキドキしないし優心とじゃないとキスしたくない!」
優心
「っ……ならいいんだよ!」
私
「んっ……!?」