世界No.1暴走族・天海朧月 下

優心
「ちげーよ!俺が七聖の爪に塗ってあげたいんだって!」

あ、そういうこと?


「じゃあお願い。右手やりづらくて」

はい、とマニキュアを渡した。

優心は私の右手を支えると、親指から塗っていった。

なんか……変なの。


「優心って、器用なんだ」

優心
「お前は不器用だけどな。守りたいものの守り方とか特に」

う……これは、根に持ってるな。


「……優心」

優心
「なんだよ」
あの日以来言ってないから……言おう。


「……好きだよ」

優心
「っ……!?おまっ、動揺させんな!」

おぉ、照れてる照れてる!

最近、優心は照れ屋だと気づいた。

私と同じ、うぶな反応がまた可愛い。


「ねぇ、なんで急に来たの?」

優心
「彼氏が会いたいと思って来ちゃダメか?」


「会いたくて来たの?」

優心
「まぁそんなとこ」

ふぅーん……。

優心
「ニヤニヤすんな」

「顔赤くするな」

優心
「してねーし」


「してるわアホ」

私たちって、なんでこんな言い合いになるんだろうか……。


「カップルって、もっとイチャコラすんじゃないの?」

優心
「それを俺に聞くのかよ……」


「え、彼氏じゃん?優心」

優心
「……じゃあなに、キスとかする?その先とかも?」

キスのその先……。

っ!?
優心
「ほら、墓穴掘ってんじゃねーぞ」


「………」

な、なにも言い返せない……悔しい!


「ねぇ優心……」

優心
「今度はなに?」


「白狐……そういえば、柊しか見てない」

ピタッと動きを止めた優心。

やっぱ、優心も気づいてたんだ。

優心
「……アイツは、まだ真当勝負する気じゃないんだろ」

真当勝負か……。


「……死なないで」
もう、誰も失いたくない。

大切な人、いなくなるなんて嫌だ。

優心
「安心しろって!俺は七聖を残して死んだりなんてしねーんだから!な!?」

優心……。

優心
「お前は信じて待ってればいーの!」


「……ふっ、ありがとう」

優心
「ほら、塗れたし後は乾かすだけ!」

落ち着かない。

でも……それはみんな同じなんだ。

夏。

蒸し暑さが、さらに私たちの心を……精神を、緊張させていく。


✿七聖side✿

優心
「なぁ七聖、お前の兄貴ってなんて名前?」

私のお部屋でくつろぐ優心。

夏休みになってから、優心は私の家に泊まるようになった。


「帝……疾風だよ」

優心
「………え、疾風ってあの疾風さん!?」

……?


「会ったことでもあんの?」

優心
「師匠に決まってんだろ!」

……師匠??

お兄ちゃんが?
優心
「あー……俺がまだ弱かった時、街歩いてたらチンピラとぶつかってさ。そん時に、素早く助けてくれたんだよ」

そんなことがあったんだ……!

さすがお兄ちゃんだなぁ……。

優心
「その時のケンカがすげーかっこよくて!兄ちゃんと親友だったのは後から知ったんだけどな!ふたりからケンカ教えてもらうようになったんだよ!」

……ん?


「優心……お兄ちゃんいるの?」

優心
「?言ってなかったっけ?いるよ!」

………えぇ!


「あ、会ったことない!」
優心
「まぁ、今海外にいるし……?」

えぇっ!


「……優心の家族に会いたいな。仲良くなりたいなぁ」

優心
「っ……」

最近、お父さんがよく一緒にご飯連れてってくれたりしてる。

でも、あんまり真藤家とは関わってないから。

優心
「まぁ、いいよ。会わせてやるよ!」


「怖い人だったりする?お兄さん」

優心
「いや?あ、ロリコンだけど。名前は剣」

剣(けん)かぁ……。
優心みたく、優しかったりするのかな。

……なんて。

優心
「あ!兄ちゃんに惚れんなよ!?」


「なっ!優心以外に惚れるわけないじゃん!」

優心
「お前はミーハーそうだから心配なんだよ!」

あーもう!うるさいなこの男は!

私は優心の頬を両手で挟んだ。


「私はっ、優心しか見えてないんだよ!現に天王も海王も男しかいないのに、私が選んだのは優心だもん!優心にしかドキドキしないし優心とじゃないとキスしたくない!」

優心
「っ……ならいいんだよ!」


「んっ……!?」