「指」


彼の指は、わたしの指を包む様に握り込んでいる。


「冷たいんだけど」


彼の指は、痛いくらいに、ひどく冷えている。


「冷やしてあげているんだよ」


憎らしい事を言われている、筈だ。


嫌みに聞こえないのは、彼の声の所為なのだろうか。


……彼は狡い。