「行ったか、アローナは」

 王宮の廊下を歩きながらジンは言う。

「はい。
 アハト様がついて行かれたので問題はないと思いますが」
と言うフェルナンをチラと振り返り、

「ずいぶんとアハトを信用するようになったもんだな」
と言うと、

「信用してますよ、最初から。
 おのれの権力のためなら、なんでもする人ですから。

 今、アローナ様に上手く取り入ろうとしているところなんで、アローナ様のことはちゃんと守ってくださると思いますよ」
とフェルナンは言う。

 つい、渋い顔をしてしまうと、
「でもまあ、パッと見、アハト様の方がアローナ様にいいように使われてますけどね」
と言って、フェルナンは笑った。

「……シャナもいればよかったんだが。
 あいつ、いなくていいときはいるくせに。
 
 こういうときはいないからな」

「ご自分が前王のところにやったんじゃないですか」
と言うフェルナンに、

「そうなんだが。
 雇いたくないときは雇え雇えとうるさいくせに、今だっ! ってときにはいないなと思って。

 今なら、シャナが二人いたら、二人雇いたいところなんだが」
と言う。