アローナはアハトとともに馬車に乗り、出発した。

 金色の派手な馬車だ。
 護衛もついている。

「襲われませんか、これ」
とアローナは言ったが、

「王室の紋章が入っているので、逆に襲われないです。
 メディフィスの報復は恐ろしいので」
とアハトは言う。

「でも、今、メディフィスを仕切っているのは、ジン様ですよ」

 大丈夫ですか?
 舐められてないですか?
とアローナが言うと、

「……たぶん、この世界でもっともジン様を舐めているのは貴女ですよね。
 まあ、どんな勇猛な男も嫁には頭が上がらないものですが」
とアハトは、しみじみと言ってきた。

「ま、ジン様はやさしすぎるのが玉に瑕ですが、あれでなかなか強く賢い男ですよ」
とジンを売り込むように言ってくるので、

「アハト様は、ジン様と敵対しているのではないのですか?」
と小首を傾げてアローナが問うと、アハトは言う。

「人として、王として、認めているからこそ、厄介なのです」