まあ、姫様、大人になられて、という顔をフウはするが。

「いや、へったくそなカーヌーンを聴かせて、卒倒させかけただけでしょ?」
と思わず言ってしまっていた。

 聴いてたんですか……という顔をアローナがする。

 ……へったくそなは言い過ぎだったな。

 仮にもお妃様となられる方なのだから。

 でも、はじまりがはじまりだっただけに、どうも口調がくだけてしまうな、
と反省しながら、フェルナンは咳払いをして言った。

「わかりました。
 出かけてもよろしいですけど。

 王の許可を取ることと、誰かお供のものを連れていくこと。
 この二点は守ってください」

 だか、アローナは即行、
「いえいえ。
 王の許可はとれません」
と言ってくる。

「だから、何処に行くつもりなんですか。
 とってくださいっ」
と押し問答がはじまった。

「あの、お供のものを探せって、フェルナン様はついて来てくださらないのですか?」

「私に様はいりません」
とフェルナンはアローナに言ったあとで、

「よく考えたら、今、城を離れられなかったんですよ」
と断る。

 ああ、困ったな、とフェルナンは呟いた。