フェルナンは、面倒な相手が二倍に増えたなーという顔をしているなあ、とアローナを見ながら思っていた。
ほんとうにすぐ顔に出る人だ、と思う。
「実はちょっと行きたいところがあるのです」
などと言い出すアローナに、
「じゃあ、私もついて行きますよ」
とフェルナンが言うと、アローナは、えー? という顔をする。
「仕事中にそんなところに行っていいんですか?」
「いや、そんなところって、何処なんですか……。
っていうか、それを言うなら、式はまだですが、一応、王の妃である貴女も今、勤務中では」
「えっ?
私、今、お仕事中なんですか?」
とアローナは目をしばたたく。
「なにせ、お妃様ですからね。
重要な客人が来たら、笑顔でもてなすのも仕事のうちでしょう?
夜は夜で、王をもてなしてくださらないと困りますし」
「……そんな昼も夜もおもてなししてたら、休むとこないじゃないですか」
そう可愛らしく文句を言ってくるアローナに、
「いや、今、まさに休んでますよね~。
っていうか、ほぼ休んでますよね~。
たまには働いてください」
と言ったが、アローナは、
「でも、昨夜もちゃんと王をもてなしましたよ」
と反論してくる。