「どちらに行かれるのです?」
とフウは少し強めに訊いてみた。

 エンが姫に対して、いつもそうしているように。

 このままひとりでアローナを行かせて、また行方不明にでもなられては、たまらないからだ。

「……何処か良いところですか?」
とアローナの表情を窺いながら、フウは訊いてみた。

 エンが姫はすぐ顔に出る、と言っていたからだ。

 すると、アローナは、うーんと小首を傾げ、
「男性にとっては良いところかもね。
 でも、若い娘が行くところではないわ。

 付いてきたら危ないわよ」
と言う。

「じゃあ、姫様も行かないでください。
 と言いますか、このまま姫様を行かせて、姫様になにかあったら、私はきっと、エン様に死ぬより恐ろしい目に遭わされます。

 それくらいなら今、行って、ひどい目に遭った方がマシです」
とつい、どんだけエンが怖いんだ、と思うようなことを言ってしまう。

 だが、エンの恐ろしさを知るアローナには、こちらの恐怖がよく伝わったようだった。