「前王は困った方なのだ。
 強い王かもしれないが、あのような方が支配する国では民は幸せにはなれない。

 ジン様は強く賢いが、人の良いところがあるので。
 もしかしたら、他国から舐められる部分もあるかもしれない。

 だが、国民はジン様の方を支持している」

 だから、これで良いのだ、とフェルナンは言い切った。

「我が国は強くなりすぎた。
 このままでは周囲の諸国が反発し、結託して、我が国に歯向かってくるかもしれん。

 だからこれで良いのだ」

「そうですか。
 まあ、前王は確かに困った方のようですね。

 私ももともとはあの方を殺すのに雇われたので、いろいろ調べておりましたけれど。

 残忍で色ボケで強欲に他国を取りに行く困った王様なのに、何処か憎めないところもある」

「……そここそがもっとも困ったところなのだ。
 それでジン様も前王を殺すに殺せないし。

 私を含め、周りの者も前王を殺せと進言しにくい」

「この城の皆さん、人がいいですよねえ」
とシャナは変に感心したように言ったあとで、

「まあ、とりあえず、潜入してきますよ」
と軽く言った。