「はい」
「いや、教えろよ……」

「いえいえ。
 わたくし、殺し屋として潜んでおりましたので、教えられるわけないじゃないですか」

 っていうか、そのような義理もありません、と言うと、フェルナンは無言でこちらを見たあとで、
「お前、明日から警備の方に回してやろうかと思っていたが、厨房に戻るか」
と脅してくる。

「あ、その件でしたら、もう大丈夫です。
 わたくし、先程、正式に王に雇われまして」

「暗殺者としてか?」
とフェルナンが驚く。

「王は、ついに前王を殺されるのか?
 それとも、小賢しいアハト様を?

 あるいは、食事を残すと、いちいち小言を言ってくる料理長を?」

「いやそれ、あなたが始末したい相手ですよね?」
と確認したあとで、シャナは言う。

「違います。
 私は暗殺者としてではなく、間者として雇われたのです。

 前王の様子を見て来いと。

 アローナ様を差し出すよう、前王が言われているようですね」

 ジンの腹心の部下であるフェルナンになら言ってもよいだろうと思い、そう告げると、うむ、と頷き、フェルナンは眉をひそめた。