「フェルナン様。
 フェルナン様はアローナ様が王の妃になったので、よろしいのですか?」

 そう訊くと、腕組みしたフェルナンは渋い顔をしながらも言ってきた。

「いいも悪いもない。
 珍しく王が気に入られた姫なのだから。

 前王があのような方だったので、あの父親を反面教師として、ジン様は王にしては身綺麗すぎるくらい身綺麗に生きて来られた。

 なので、もしや、このまま妃は(めと)らないとか言い出されるのではと、ちょっと怖かったのだ。

 前王のとき、後宮のみなが気の多い王様の気をなんとか引こうと、陰謀渦巻いて大変だったのも、ずっと見てこられてたしな。

 そんな王が今はご自分からアローナ様を欲しておられる。

 ちょっと変わった姫だが、刺客から王を守ってくれたり、私の悩みも解決してくださったりする。

 私としては、このまま上手く式まで持ち込めればと思っているのだが」

「でもフェルナン様は、ずっとアローナ様を娼婦だと思ってロクでもない態度をとってらっしゃましたよね?
 アローナ様に根に持たれているかもしれませんが、よろしいのですか?」

「……知らなかったんだから、仕方ないだろう」

「わたくし、あーあ、と思いながら、見ておりました」
と白状すると、

「お前は最初からアローナ様がアッサンドラの姫だと知っていたのか」
とフェルナンは責めるように言ってくる。