「絃、お前は天鬼組の光であれ」
ドアを開けている男のつぶやきは、揺らぐ心を繋ぎ止めるには十分だった。
施設は天鬼組が支援しているため、安心だろう。
そして私の姿さえあの場所に無ければ、子供たちの安全も保証されるはず。
たとえ次から私共々、狙われる場所が天鬼組本部となったとしても。
「ひまわり園のみんなを、ちゃんと守ってくれる…?」
「あぁ、約束する」
那岐は私からの視線を一切逸らさずに言い切った。
「佳祐、…バイバイ」
謝らせてしまってごめんなさい。
痛い思いをさせてごめんなさい。
もう寂しくなっても抱きしめてあげられないけれど。
でも佳祐は私の大切な家族だから、守りたいんだよ。
「絃っ!行くなよ…!俺たち家族だろ…っ」
「……行こう那岐」
閉まるドア。
内側からしか見えない景色を、私は最後までこの目に焼き付けた。
「泣かねえんだな」
「…泣いたら負けな気がして。それに、天鬼組の顔が立たないと思うし」
「…そうか」
ただずっと、キラキラ輝くネオンのような光を私は眺めつづけた。
*