陽太side




「これからも一緒に……冒険の書を、集めに行こう」



とりあえず馬鹿だと思った。

なに言ってんのあの人……。
ねぇそうじゃないでしょ。


まぁ俺はそんなふたりを物陰からこっそり覗いてるわけなんだけどさ。



「天道、お前なにやってんだこんなところで」


「ちょっと黙ってて。今いいところなんだから」


「ん?お頭とお嬢じゃないっすか!」


「だから静かにしてってば」



誰よりも嬉しそうに絃織さんのことを“お頭”と呼んでるちょび髭ハゲ。


確か俊吾だっけ。


俺の行動が覗き見だと理解すると、そいつも同じように物陰に隠れた。

そしてその先の様子を一緒になって伺う。



「絃織さんは今から絃ちゃんにプロポーズしようとしてるんだって」


「プロポーズぅ!?」


「声でかいって。バレたらどうすんの」


「あっ、悪い」



俊吾は小声で謝罪をしたけど無視。


まぁ分かりやすく言えば絃織さんは「結婚前提で付き合おう」と、言おうとしているわけで。

ただあの様子じゃ絶望的だ。



「…なんつうか、その、」


「うん?どうしたの…?」


「あれだ、…その、」



あの人ほんと何やってんの?

那岐 絃織がそんなんだとか笑っちゃうんだけど。



「料理とか、別にできなくていい。なんなら毎日バニラアイスでいいくらいだ」



さすがにため息も出ない。


一生食べてろよって感じだ。
大体なんでバニラアイスなの…。

確かに絃ちゃんはしょっちゅう食べてたけどさぁ。