「…すみません…でした…、」
パッと、胸ぐらを掴む腕は離れた。
どうして佳祐に謝らせているの。
どうして彼がそんな顔をしなくてはいけないの。
……ぜんぶ私のせいなのに。
「───絃、」
そして次に捉えられたのは私だった。
立ちすくむ前に飄々と立つ男は、なにを考えているのだろう。
「俺たちの元に来い。お前も大事なモンを守りてえんだろ」
座り込む弟と妹。
膝を擦り剥いてしまったのか、血が出ている。
そして佳祐。
ずっと手を引っ張っていた存在が、泣き虫だった男の子が、私を守るためにこんなひどい目に遭ってしまった。
それは私にも守れる力がなくて、知らないことが多すぎるから。
「…いく。…私も、強くなりたい」
ハッキリとうなずいた私を見つめ、男も浅くうなずく。
そして目の前に用意されていた車へ、流れるままに近寄った。
「俊吾、お前は絃の荷物の準備に回れ」
「はいっ!」
えっ、荷物って…。
私の着替えとか着替えとか、着替えとか…!?
「ちょっと待って!私も施設に行くっ」
「お前はこのまま俺たちの本拠地に直行だ。話はすでにぜんぶ通してある」