陽太とはあれからも普通に話すことができていた。

最初はやっぱり申し訳なさそうな顔してきたけど、1度だけ「ごめん」と小さくつぶやいた陽太。

だから私は言ってやった。
いつも奴が私に言ってたみたいに。


「え?なんのこと?」って。



「お、やっと提出する気になったか天城」


「はい、これが例のブツです」


「…危ない言い方はやめなさい。お前が言うと笑えないんだよ」



放課後呼び出された職員室にて、ハゲた担任はハゲかけた声でハゲかけの視線を私に送ってハゲしくため息をハゲた。

間違えた吐いた。


てか陽太のヤツ、なにを書いたんだろう。

私もまだ見てないから知らなかった。



「……天城。お前、料理はできるのか」


「え?できないですけど…」


「掃除洗濯は」


「…いつも使用人の人が、」


「そうだったな、お前のとこは結局そうなるか。だが少しでも出来ないと困るぞ」



差し出した封筒からプリントを出して、じっと見つめた担任はそんな変なことを聞いてくる。


え、どういうこと…?

陽太ってばそこに何を書いたの…?



「ちょっと先生見せてっ!」


「おい、ちょ、」


「───っ!わぁぁぁちょっと先生これ保留っ!!保留ね!?ナシではないからね!?」


「お、おう?あっ、おい天城!!廊下は走るな!」



ダッシュで職員室を出る。



「なに書いてんの陽太のヤツ…!!」



こういうのは勝手に書いちゃ駄目なんだよバカっ!!


そこには、その箇所には。

消しゴムでは消えないようにボールペンで大きく。



那岐 絃になります───と、書かれてあった。