赤ちゃんだ、やっぱり。
あれは嫌だこれは嫌だって、わがまま言ってるだけの。
「だって、いつも……期待してた…っ」
このワンピースだって本当は那岐に見せたかったから。
お祭りに行けば途中で合流して一緒に回れるかなって。
陽太と向かったことにヤキモチ妬いてくれないかなって、そんなことを考えた。
「傷なんか痛くない、ここが、ずっとずっと痛い…っ、那岐の声聞くと、その香水の匂いを嗅ぐと……いたい、」
胸をぎゅと押さえる。
那岐を見ると無性に泣きたくなるときがある。
笑顔を見ると独り占めしたくなって、ふたりだけの時間が大好きで。
ずっとこのままだったらいいのにって、時間なんか止まっちゃえって。
「こんなの…好きになっちゃうよ…っ、好きにならないほうがおかしい……っ、」
那岐の顔、見れない。
見れるわけがないし、見ちゃだめだ。
「那岐しか目に入らないもん、おかしい、私おかしい…、おかしい、これほんとおかしい……っ」
もっとロマンチックに伝えたかった。
伝えちゃ駄目だけど、もし伝えるとしたら可愛らしく可憐に、でも私らしく。
でも結局はこんなもの。
おかしい、なんて。
私が一番おかしいよ……。
「…だったら壊れちまえよ、もう」
そのつぶやきは、私の言葉に対する返事なんかじゃなくて。
彼の心の中にいる自分自身の問いかけに回答を送ったようなもの。
「っ…!」
だけど理解するより先に後頭部に回された手、腰に回る腕。
ぐいっと力強く引き寄せられてしまって。