「陽人、大丈夫だから行こう。ちょっとぶつかっただけだよ」

「そうは見えなかったけど」

陽人は岡崎先輩に向かって

「二度とコイツに近づくなよ」

って。

陽人、かっこいいーー!姉弟じゃなかったら惚れるやつ。

それから陽人の手を取って、私たちはその場から離れた。

岡崎先輩が見えなくなってから

「陽人、ごめん。ご心配おかけしました」

「なんなのあの先輩。姉ちゃん、ケガしてない?」

「うん、大丈夫。ありがとう。さっきの陽人かっこ良かったよ。でもさ≪コイツ≫ってなに?私はお姉さんでしょ」

「ええっ、姉ちゃんの引っかかってるとこってそこ?」

「うん、“こいつ”とか“おまえ”ではない」

「俺、“おまえ”なんて言ったことないけど」

「ん?そっか。そうだった。でも誰かに言われたような」

「っつーかさ、みんなの前で“姉ちゃん”って呼べないだろ、ハズいよ」

お年頃の男の子って意外なことで恥ずかしがったりして、難しいのね。