「何やってんだよ」
そう言って岡崎先輩の振り上げた右手を握っていたのは、陽人だった。
そっか、陽人はグランドでリレーの練習をしていたんだね。助かったぁ。
って、ここに登場するのは流れから言って高槻先輩なんじゃないの?
って思う余裕があったみたい。
それでも私は小さく震えていたみたいで。
「ねぇ、何があったの?三年の先輩ですよね、どういうことですか?」
「陽人、これはね、なんでもないんだよ?」
「ちょっと黙ってて。俺、この先輩に聞いてるの」
そう声を荒げる陽人の顔が怖くて、岡崎先輩も黙ってしまった。
陽人に知られたくないのもあるし、ここは退散した方がいいかな。