希望の高校は私の成績だと入学できるかギリギリだったから、最後の追い込みでどうにか成績を伸ばそうと受験勉強を頑張っていたんだ。
家に帰るまでの時間も惜しくて、歩きながら過去問の問題集を解いていると家までの下りの坂道に差し掛かったところの、ちょっとした段差に躓いて見事に転んでしまって。
前を向いて歩いていなかった私が悪いんだけどね。
転んだ拍子にカバンに入れてあったミカンが1つ転がってしまい、
「あーっ、待ってミカンーー」
なんて叫んだら、
偶然坂の下にいた高校生の男の人が転がるミカンを拾ってくれて、私のところまで持って来てくれた。
「大丈夫?立てる?」
その高校生はそう言って手を差し伸べてくれたの。
私はその差し伸べてくれた手を少し戸惑いながらも掴ませてもらって起き上がると、その高校生は私より坂の下にいるせいか背は私よりも少し高いくらいで。
顔は暗くてハッキリ見えなかったけど、にっこり笑いながら転がったミカンを渡してくれた。