ちょうど一年前。

高校受験を控えた私は放課後に図書館で勉強してから家に帰ることが日課になっていて、その日も図書館で勉強していたの。

「もう6時なんだ。そろそろ帰らなきゃ」

問題集をカバンの中に仕舞おうとした時、カバンに入っている2つのミカンが目に入った。

今朝お母さんがビタミンも摂りなさいってミカンを入れてくれたのを思い出して。

『食べて帰らないとお母さんが文句言うかな?』

そう思いながらミカンをじーっと見ていたら、無性にミカンに落書きをしたくなって、猫の顔を油性マジックで書き込んでみた。

『よし、これでカップルの猫になった。1つを食べちゃったら残された猫が可哀想だもんね』

なんて、食べなかった言い訳を作ってみた。

図書館を出ると辺りはすっかり真っ暗になっていて。

吐く息だけが白く、とても寒い夜だったのを覚えている。