「あっ、これ、今日バレンタインですし、良かったら貰ってくれませんか?おじさんが食べてくれたら、私、嬉しいです」

そう言って、落としてしまったチョコレートだけどラッピングは潰れていないし、中身は大丈夫だろうと思っておじさんに渡した。

ちょっと強引だったかな?

でも、他にも工事作業中の人たちが何人もいる中でこのおじさんだけが私のことを心配してくれた優しい人だし。

チョコレートを無理やり渡しながら、初めてその人の顔を覗いた。

あれ?意外と若い人なのかな。

ヘルメット被ってるからハッキリと顔は見えないけど。

立って並ぶとその人は背が高くて、その人からフワッとアクアマリンのコロンの香りがした。