【完】桜色の君を抱きしめたい

「佐伯、起きたか?」

・・・。

まだ寝てるのか。うわっ!危ねー!

夢花は横に倒れそうになったが貴斗が素早く横に座り、肩で受け止めた。

セーフ...。ったく、気持ち良さそうに寝やがって。そういえば最初に会った時も図書室で寝てたな。寝る子は育つって言うけどこいつは小さいままだな。まぁ、それが可愛いんだけどな・・・って、俺、何変なこと考えてんだ。

「貴斗先輩...」

「ん?何だ寝言か」

「貴斗先輩、すき...」

・・・!

なっ!?こいつ今、なんて言ったんだ?

「貴斗先輩、すき焼き美味しいですね...むにゃむにゃ.....」
「すき焼き...プッ、くふふふふ」

なんですき焼きなんだよ。面白いにも程があるぞ。

貴斗は夢花を自分の方に寄せて呟いた。

「開校祭が終わったら食べに行こうな夢花。ふぁ〜...俺も眠くなってきた.....」


その数分後、用事を済ませた凪が帰ってきた。

「佐伯さんお待たせ。...あれ?貴斗も来てたんだ。しかも二人揃って寝てるし...」

凪は貴斗を起こそうと頬をつねった。

「イッテ!何すんだよ!?」

「一人だけ羨ましい事してるからだ。ほら、帰るから佐伯さん起こして」

「だからってつねる事ないだろ。おい、佐伯。起きろ。帰るぞ」

「ん〜?ふぁ〜貴斗先輩?もう帰る時間ですか?すっかり寝てしまいました」

「佐伯さん鞄」

「ありがとうございます凪先輩」

「ふぁ〜まだ寝たりねーな...」

「これ以上寝たら夜寝れなくなるぞ?」

「私もまだ眠いです。なんか良い夢を見ていたような...?」

「どんな夢見てたの?」

「俺知ってるぞ。寝言言ってたし」

「寝言ですか!?な、なんて言ってたんですか。貴斗先輩...!」

「開校祭終わったら教えてやる。さあ、帰ろーぜ」

「教えて下さい貴斗先輩...!」


良い夢を見た後はいよいよ開校祭。夢花は無事にツバキを演じきれるのだろうか。
ヒュ〜 ドン!ドドン!

今日は開校祭当日。生徒は朝から張り切って準備を進めている。もちろん、夢花、貴斗、凪のクラスも開会式に向けて準備を進めていた。

「リリー、あなたはご両親に本当の気持ちを伝えて下さい。それがあなたの為」

「カット!佐伯さん良くなってるよ。本番は明日だから今日はみっちり練習するから」

「はい!」



ー貴斗のクラスー

貴斗達は衣装の最後の調整をして開会式のステージで待機していた。

「はぁ...早く終わってくれないかな」

天使の衣装を早く脱ぎたくてしょうがない貴斗。

「おいおい。始まってもないのに何、弱気になっているんだよ」

貴斗の姿を見て笑いを堪えながら悪魔を担当するクラスの男子が声をかけてきた。

「あのなぁ、こんなの着てステージに立ったら俺は一生からかわれる事になるんだぞ?」

「それはそれでいい思い出じゃないか。あんまり気にすんなって」

「ちくしょう...!」

下を向いて拳を握り、涙を流しながら悔しさを堪えた貴斗。その頃凪は飲食店の仕込みをしていた。

「飲み物はこれでよし!後は...」

「横田くんこっちは終わったよ」

クラスの女子が凪に報告しに来た。

「ありがとう。これで全部終わったから後は開会式まで休憩しようか」

準備が終わって椅子に座ってまったりしていると凪にある話を持ちかけてきた。

「ねぇ横田くんってさ、一年生の佐伯さん?だっけ。あの子とよく居るよね」

「ああ。佐伯さんとは図書で一緒で。それがどうしたの?」

「前にさ、一年の女子で揉め事あったでしょ。その佐伯さんに危害加えた女子達が最近、この辺りにいるみたいでさ」

「確かまだ停学だったよね。それがどうして学校近くに...」

その時凪は嫌な予感がしていた。

「これ、聞いた話だからあまり根拠はないけど横田くんには伝えておこうと思って。何かあってからじゃ遅いし」

「教えてくれてありがとう。佐伯さんには演劇に集中してほしいし、それに、もうあんな思いさせたくないからね」
凪の心配が積もる中、開校祭の開会式が始まった。

「これより、開校祭を開始します。ここからの司会は二年生が進行を務めます」

貴斗達が出てくると歓声と笑いが体育館中に広がった。

「佐伯さん」

「凪先輩」

「貴斗やつ、嫌だと言ってたのに凄い盛り上がってるね」

「そうですね。見ててとても楽しいです。凪先輩それ...」

夢花は凪が持っているスマホを指さした。

「ああ、これ?面白いから沢山写真を撮って、後でからかってあげようと思ってね」

スマホのカメラ機能で連続して写真を撮る凪。夢花はその姿を見て微笑んだ。

凪先輩、楽しそうです。私も写真撮りましょう。これも思い出です。
開会式が終わり、二年生、三年生は飲食店を開始。一年生は劇のリハーサル。午後から最初のクラスの劇が始まった。他の一年生はライバルの演劇を観賞。

開校祭での演劇は終了後、一年生全体でアンケート、審査員の先生方で採点され一位を決める。

最初のクラスが終わり、それからまた練習を繰り返して一日目はこれで終了した。翌日は夢花達のクラスの演劇。朝早くから集まって最後の練習をする事になった。
「いよいよ明日だね」

「はい。なんだか緊張してきました」

夢花は帰る前に図書室の展示の作業を行っていた。

「大丈夫だろ。あれだけ練習してきたんだから」

「貴斗、お前も手伝え。さもないと、この写真を父さん達に送るぞ?」

スマホで天使の格好をした貴斗の写真を見せた。

「おいおい...!脅すなんて卑怯だぞ!?」

「なら早く手伝え。明日の展示に間に合わないだろ」

「人使いの荒い兄貴だな」

「あのぉ〜貴斗先輩」

「どうした?」

「実は私も写真撮ってました」

凪と一緒に撮った写真を貴斗に見せた。それを見た貴斗はあんぐりとした。
「お前まで...。佐伯にだけは見られたくなかった」

「ごめんなさい...。でも貴斗先輩、凄く綺麗でしたよ?」

「え?」

「プッ...!」

夢花の発言に貴斗は驚き、凪は笑いだした。

「貴斗先輩は背が高いからとても見映えが良かったですし、普段から鍛えているから...えっと、その....」

言葉が出てこなくなってどう伝えたらいいか分からなくなった。

「佐伯、もういい。なんか恥ずかしくなってきた...」

赤く染った顔を片手で隠して後ろを向いた貴斗。その様子を見て凪は益々笑いが止まらなくなった。