「…東はもう少し警戒心を持った方がいい」

そう呟いた後、

「明日からの出張に持っていく資料に訂正箇所があったから修正をお願いしたい」

必要なものは東のデスクに置いてある、部長はそれだけ言うと私の手を離して先にオフィスに戻って行った。

…警戒心…進藤にも部長にも同じことを言われた。私はそんなに警戒心がないのだろうか。
進藤も部長も警戒心を待たないといけない相手ではないと思うのに。
でも、まさかの進藤からの告白に動揺を隠せない。一体いつから…?
部長もどうしてそんな顔で私を見るのだろう。そもそも部長はどうして私が資料室にいるとわかったんだろう。
色々思う所はあったが、頼まれた仕事と、他にもこなさなきゃいけない仕事がたくさんある。今は仕事に集中しよう。
そうして自分のデスクに向かうと、先に出勤していた奈美がおはよー、と迎えてくれる。
おはよ、と答えると、

「進藤に連れられてどこ行ってたの?」

とニヤニヤしながら聞かれた。

「…あ、見てたの」

「うん、先に出勤してたから。私のデスクから入り口よく見えるし」

「…うん、ちょっとね…」

「それに広岡部長もさっき芽衣子に頼みたい仕事があるって来て、進藤に連れて行かれましたって言ったら血相変えて出て行ったけど、会えた?」

「…う、うん」

「…何があったの?」