ハッとして周りを見れば、蒼介さんの車の中にいた。そうだ、遊園地からの帰り道だった。窓の外の景色から、もう私のマンションの前に着いたんだと理解した。
蒼介さんは運転席の方から身を乗り出して私を覗き込んでいる。
さっき頬に感じた温もりは、蒼介さんの手だったのだろう。

「いや、むしろ俺はラッキーだけど」

ニヤリと笑う。…もう、この人は…!でも次の瞬間、怖い夢でも見た?と優しい声色で問われれば、とくん、と心臓が音を立てた。ああ、私はもう誰にも取られたくないと思うくらいには蒼介さんのことを好きになっているんだ…
蒼介さんはそれ以上深くは問わず、私の頭をポンポンっとする。

「創太くんはもうお姉さんの所に送り届けて来たよ。東があんまり可愛い顔でぐっすり寝てるから、起こさなかった」

遊園地から帰る前に、ナビに姉の住所を登録しておおよその到着時間も姉にメールしていたから私が寝ていても何の問題もなかったのだろう。
それにしても、可愛い顔でぐっすりって、またそんなことを言って…頬が赤くなる。

「東が疲れてなければこの後一緒に飯でもと思ったけど、今日は帰ってゆっくり休んだ方がよさそうだな」

「…はい、今日は帰ります…」

突然自覚してしまった好きと言う気持ちに頭と心が追いつかない。今日はもうゆっくり休もう。